愛しい我が子へ


その後ジョーカーは彼女の義兄に、兄に、義弟に、弟に義姉(ryにそりゃあもう"熱烈"な歓迎を受けた。何処かげっそりとしている夫となる彼にカムイは心配そうに連れよるが「"あいつ"ができた事を俺が逃げるわけには行きません」と息を切らしながら言っていた。
その後に「いや……"あいつ"は挨拶暗夜王族だけだったか……くそ……」と嘗ての"夫"に悪態を吐いててカムイは少し笑ってしまった。

しょうがないですよ。今回は大所帯なんですから。

1人も、欠けてない兄弟達に嬉しそうに笑うカムイを見たらそれ以上は何も言えずにジョーカーは甘んじて受けます、とやつれた顔で釣られて微笑んだ。



そして、結婚式はとても盛大なものを挙げられた。
カムイのよ!!?カムイのだぞ!!?カムイ姉様のですよ!!?以下略。そんなご兄弟のプッシュにより過去よりも盛大だった。

そして、そんな結婚式から数ヶ月経ったある日、カムイは懐妊した。
二人は勿論周りも祝福したがカムイの顔は憂いを帯びていた。


この子は
きっと、
「あの子」だろうから、と目を伏せていた。

「名前……どうしましょうか」

「……カムイさんが決めてください」

ジョーカーは目をそらす。
父親になる自信が無い、と言っていた。それはカムイもそうだった。

彼は、彼女は、嘗ていた「子供達」を見捨てた記憶も戻っていたからだ。

「お前がいたから」と自分の過ちを息子へ責めた。
「未来へ繋いで」と自分は居なくなるのに娘をその言葉で縛り付けた。


「では、娘なら私が、息子ならジョーカーさん、貴方が名付けてください」

「……ですが…」

彼は渋る。娘は嘗て彼女が生んだ存在。息子は嘗て、彼の子供だった。
互いに前世、なんて言っているがあれは「記憶にある確かな過去」だった。だからこそ、子供の事を素直に祝福出来なかった。


「ソレイユ、って言うのは、"彼が"考えたんです


ディーア、というのは貴方が考えた名前でしょう?」

ジョーカーが息を呑む音が部屋に静かに落ちた。「当たり」か。カムイは静かに目を閉じた。
お腹の中の、この子は間違いなく「ディーア」私の可愛い息子。


「ディーア、ごめんなさい」

お腹を撫でて声をかける。少しだけ、ぽこん、とけられた気がした。
こんな人を、母にさせてごめんなさい。もう一度謝るとまた蹴られた。


ごめんなさい、ごめんなさい。
わがままなお母さんでごめんなさい。



「私の元にきてくれて、ありがとう」


ずっと後悔していた。あの日のことを。
倒れゆく人を、私を拒んだ証と決めつけて、傷つけた。
ジョーカーは、何も言わずにお腹に添えていた手をカムイに重ねた。


「ごめん、ごめんなさい……」

「……違います、カムイ様……子供は祝福するものですよ」

謝らないでください。
そう言って二人で泣いて、泣かないで、と言うようにお腹が蹴られた。
この子はとっても優しい子だった。前も、そして、今も。


「貴方の事は絶対守るからね」

「……カムイ様、それは俺が言うべき言葉です」


自分勝手な二人だけど、許してね、と頬伝う涙を拭うことは出来なかった。






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