通じ合える



「好きです。貴女が」

ぱちくり、何度も何度もカムイは瞬きをした。
だってそれはあまりにも、唐突だったからだ。

いや、この状況でそれが言えることに驚いていた、とも取れる。もう1度カムイは長いまつ毛をパシパシと瞬かせた。



「もしかして、覚えてるんですね」

「そうです。カムイ様も?」

「じゃなきゃこんなことしません」


そう、カムイはジョーカーをベットに押し倒していた。
思い出だけでも作っておこう。そんな軽い気持ちで。まだ付き合っている人がいないと聞いたから、
嘘でもいいから1度でいいから「好きだ」と言われたかったから。でもその願いは案外あっさり叶ってしまった。

押し倒した瞬間にそれを言われたからだ。




「貴方が好きなんです」

「……ええ、私も……いえ、俺も好きです」


また言われた。どうやら嘘じゃない。
一先ず、彼を抑えていた手をカムイは離した。それでも彼は怒らかったし逃げようともしなかった。
だからカムイはそっと口を開いた。「どこから覚えているのか」と「いつから覚えていたのか」と。

「強いて言うなら、最初から、……でしょうか?いえ……明白になったのは今です」

「随分曖昧な回答ですね。……ですが私も今思えば無意識に最初から覚えていたのかもしれないです」

気がつけば無意識に、ジョーカーに対する事を言っていた
気がつけば無意識にジョーカーの事を見ていた。それは、彼も同じだった。
使えてた時から彼はカムイしか見えてなかった。

まるで「前世で結ばれた恋人のように」互いから目が離せなくなっていたのだ。
それを言うときっと「「前世では結ばれてませんけどね」」と二人口を揃えて皮肉を言う自信があった為その言葉は飲み込んだが。

「なぜ……今?」

「拒絶したら貴女が死んでしまうと本能的に思ったのでしょうか……?」

「そんなにメンタル弱くないですよ、って言いたいですけど実際に死んだ事があるから否定できませんねぇ……」

「そして私は後追い自殺をします」

「バットエンドしか見えませんね」


さらり、とジョーカーは自分へ被さる白銀の髪の毛に触れた。この髪に幾度となく触れたいと思っていた。使用人としてではなく、恋人として夫として。
それは「前世」では自分が逃げたから叶わなかった。

するりと、カムイはジョーカーの白い頬へ触れた。
この肌に下心を持って触れたいと幾度となく思っていた。主人としてではなく、恋人として。
それは「前世」では自分が忘れた為出来なかった。



「随分周り道してしまいましたねぇ」

「……ええ。最初から素直になっていれば良かったんですね」


カムイはジョーカーの頬を撫でて口付けをした。拒絶なんて、されるわけも、するはずもなかった。


「…ッ………身分に囚われ、貴方には俺なんかよりももっと素晴らしい相手がいると思っていました」

「……好きな人を好きと言えずに我慢をしていました」


彼らが嘗て愛した妻は夫は、
もう幸せになれていた。その話を聞けて、とても安堵していた。だから今度は、

勝手だけど、自分が幸せになりたかった。






「好きですよ、カムイ様。前世もその前もずっとずっと、私の心はあなたしかいません」

「私も愛していますよ。ジョーカーさん。フラれたら、死んでしまうくらい、貴方への愛が重いんですよ」





どんな過去があっても、彼らは彼女達は、お互い以上にに好きになる相手が出来ることは無いだろう。

もう一度、互いに口付けをする。

もう死ねませんね、そう笑ったジョーカーにカムイは初めて「心」を手に入れる事が出来たと、釣られて笑っていた。









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