"前"とは違う存在



敵が「透魔王国」という存在を知り、結託した白夜と暗夜。暗夜王国第一王子マークスと白夜王国第一王子リョウマもカムイを信用し、本格的に進軍を始めることになった。

今じゃ星界は白夜と暗夜、両方の民がいて、二つの国の衝突が嘘のように収まっていった。

そんなとある日マーシナリーである銀髪の青年……ラズワルドがカムイの部屋の前を通りかかった。
ラズワルドは暗夜王国第一王子であるマークス直属の部下だ。



「あらラズワルドさんお茶でも如何ですか?」

「わーい……カムイ様からのお誘い……って両手をあげて喜びたいんですけど……後ろの執事さんが恐いんですが……」

「私の事ならお気になさらず。ええお気になさらず」


笑っているのに笑ってない。ラズワルドは引きつった笑みを浮かべてこの場を去ろうとするがまあまあまあまあと、カムイに手を引かれるまま強制的にお茶に付き合わされることになった。
本来なら自分が誘って断られることが多いが……とラズワルドは逃げられない状況に冷や汗が止まらなくなった。


「しょうがないですよ。ジョーカーさんと私は一心同体ですから」

「ですね」


にこり、カムイが微笑むと執事もそれに釣られるように笑う。

「やっぱり付き合って……」

「「ません(よ)」」

「…………ジョーカーさんは私なんかよりもっとずっと幸せになれる相手がきっといますから」

「……カムイ様こそ、素晴らしいお相手が見つかると思います」

「うっわーー……こじらせてますね」

「あ??なんだと?」

「?、どういう意味です?」


もどかしい……小さくそう呟いたラズワルドだが、ジョーカーの剣幕に「ナンデモナイデス……」と顔を逸らして苦笑いをする。

すると、カムイが「そういえば」とにこやかにラズワルドに話を降ってきた。どうやら逃げる道を作らせてはくれないようだ、と、ラズワルドは諦めてカムイの話に付き合うことにした。


「何でしょうか?」

「軍の若い男性の中で未婚なのってラズワルドさんぐらいですよね?」

「ケッ、今流行りの国際結婚でもしやがれよ」

「カムイ様、貴女の執事の口がだいぶ悪いです」


そう、ジョーカーの言う通り暗夜と白夜は両国の絆が育まれる中、国籍問わずで結婚する人も増えていた。
驚きなのは白夜と暗夜の王族同士の結婚、だ。
どっちが姉でどっちが兄で誰が妹でどの人が弟か。昔は戦争をしていた国同士が今ではそんな話で盛り上がっている程だ。




「えっえー……と僕は故郷に好きな人がいるんです」

「えっ」




アズールが手袋を外すとそこには銀色に輝く指輪がはめられていた。

「まあ!いつのまに?」

「いえ、実は僕、マークス様ににつく前から結婚していたんです。案外焼餅焼きの可愛い人なんですよ」

だから早く帰らないとなぁ、と笑う男に、カムイは嬉しそうに微笑んだ。つられて笑ってしまうくらい、ラズワルドは幸せそうに笑うからだ。


「あっ、あとひとつ聞いてもいいですか?」

お茶にドボドボと角砂糖を入れて混ぜながらもあくまでもカムイの顔はにこやかだ。


「ラズワルドさんのお父様はどんなお方ですか?」

「……父さん?なんていうか……熱血で……民想いの人だったよ」

「軍師ではなく?」

「軍師?それは僕の奥さんだよ」








「なるほど。あのファザコンラズワルドさんじゃないですね……」

「何ですかそのパワーワード」

「いえこちらの話です」



あなたも「幸せ」になったんですね

そう言ってカムイは嬉しそうに、少しだけ寂しげに笑った。






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