第三の選択肢を


時と場所は変わり、星界。
カムイがジョーカーと「約束」をしてから10という年月が経った。



白夜王国、暗夜王国と共に背を向けてカムイは執事であるジョーカーと、同じくどちらにもつかないというアクアの三人で英気を養うために竜の力を持つリリスが用意してくれた星界、という空間で身を潜めていた。

コトリ、静かに置かれたお茶は小さな波紋を立てた。

「私はこのままどちらにも付きません」

「……貴女のご意向のままに」

白夜も、暗夜も敵に回しても尚、二人は一緒にいた。

アクアはある意味の共依存の関係をしている主従を見て遠巻きにため息を吐いた。戦力は1人でも多い方がいいが、あの二人はお互いが大切なあまり身を滅ぼさないだろうか、と


カムイに忠誠を誓っているから
ジョーカーを信用しているから。

"それだけ"の絆でこんな状況でも共に過ごすとは思えなかったのだ。
きっと、あの二人には何か特別な絆がある。

そう思うことにして歌姫はこれからの作戦を二人に話し始めるのだった。



◇◆◇




白夜王国と、暗夜から逃亡してアクアから「透魔王国」という真の敵の正体を知ったカムイ達はイザナ国王の助けもあり、白夜のサクラ王女、タクミ王子、カミラ王女、エリーゼ王女がカムイ達の進軍に協力してくれる事になった。

そのお供に、と彼らの連れていた兵達も仲間となり、今拠点は暗夜と白夜の人達が国という隔たりを関係なく過ごしていた。
勿論タクミ王子やオボロといった暗夜を恨んでいる人達が衝突する事もあったが少しずつ、お互いに心を許しあっているように見えた。


そしてそんな軍の日常の中、気になることがひとつ。カムイはちらりと隣で佇む執事を見る。






カムイの目の前に置かれたお洒落な茶器。あれから軍資金も増え、少しずつこういった娯楽品を揃えだした(と言っても主にカムイが使うものをメインに買っている)ジョーカーが容れてくれたお茶を飲みながらため息を吐いた。

「どうしましたかカムイ様!!?まさか……美味しくありませんでしたか!!?」

「い、いえ、!!とても美味しいですよ!その……気になることがあって……」

「……?」


カムイは一度茶器を置くと心を決めてジョーカーをうわ目で見た。ここで言わねば、ずっと言うタイミングを逃すと思ったからだ。


「……その……ジョーカーさんモテますよね……」

「……いえそんなことはないです。……カムイ様こそ。軍のあらゆる男性からプロポーズされたとお伺いしていますよ」

そう、カムイの悩みとは暗夜、白夜問わずにモテるのだこの執事は。スズカゼさんといい勝負と言ってもいいほどに。
確かに容姿もいい。性格は若干の難ありという事もあるが実は面倒見のいいということは彼と触れ合う事で知る人も多く、その事をきっかけに告白まで至る女性の方がいると少なからず聞いている。


だが彼の言う通り、確かにカムイもちょくちょく告白はされた。想い人がいる、それを理由に断っているが彼は何も思わないのだろうか?少なからず少しくらいは思っていてほしいと思っている自分がいる。となんだかもどかしい感情を抱えていた。



「…………私が告白されている……ではそれに対する気持ちは何かないですか?」

「そうですね……カムイ様を本気で幸せに出来るやつのみ許します」

「……いないでしょうねぇ」

「何故ですか?」

「私はジョーカーさんといられるのが一番ですから」

ふふん、言ってやりました。
そう、カムイの顔が物語る。だがジョーカーは



「執事として……この上ないお言葉です」


にこり、
カムイの言葉の「真意」を理解してないのかそう微笑んで彼はカムイの飲み終わった茶器をワゴンへ片付けて「またお伺いしますね」とその場を去っていった。



「…………"相変わらず"意気地無しですね」





ガシャーーーンパリーン!!
キャーーー!!ジョーカーさんが珍しいですぅ!!どどどどうしたんですかぁーー!!お顔が赤いですよ!!


はぁーーー、カムイが長いため息を吐いていると閉じられた扉の向こうからそんな音と悲鳴が聞こえた。




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