あなたが無事なら


ソレイユの軍の入団はラズワルドさんと二人で反対をしていたが,ソレイユがいた星界が謎の軍団に襲われ、結局成り行きで軍への入団を許可してしまった。

だが事態は深刻だ。マークス兄さんやレオンさんのご子息のいる星界も同じく襲われた、と聞く。暗夜と白夜が同盟を組んで手を取り合ったのはいいが、やはり白夜は暗夜へ根強い恨み辛みが積もっている為、反逆者も多いのだ。


「……本当は危険な場所に来て欲しくありませんでしたが……決して無茶をしないでくださいねソレイユ」

「うん!!やったあこれからは家族で過ごせるんだよね!」

「そう……ですね。不謹慎ですが喜ばしいことなのかも知れません」


今日の進軍はノスフェラトゥの残党及び、反逆軍の白夜兵の捕縛だ。今回初陣となるソレイユは私の血も色濃く継いでおり、竜脈を操ることや竜化ができた為軍にとってはいい戦力には違いなかった。……本当は連れてきたくなかったのですが……


「良いですかソレイユ、貴方は危なくなったら逃げてくださいね」

「父さんと母さんを置いて?そんなのやだよ」

「……これはお願いです。貴女はまだ幼い……私たちと違って未来へ繋ぐ役割があるんですから」

「……幼くないよ。あたしだって鍛えてるし……」

お願いですから、いい子だから言うことを聞いて、
そう笑って彼女の頭を撫でるともう何も言わなくなった。





🌹





襲いかかってくる白夜残党兵たちを殺さないようにその刀を流して峰打ちを食らわせる。
単純に倒す、より難しいこの作業は暗夜軍を消耗させていた。だがヒノカ姉さん……否、ヒノカ女王も白夜をいい方向へ向かわせる日々に手を回している。彼女の負担を考えると彼らを殺す事はこの白夜と暗夜に再び亀裂を生むとわかっていた為そんなことは出来なかった。

「カムイ様!!大丈夫ですか!?」


「ええっ……!ソレイユは……!!?」

「ご息女はマークス様たちと一緒です!カムイ様、一度下がりましょう!!」

白夜兵に追い詰められるままに進んでいると私はまんまと一人おびき出されしまった。当然だ。彼らが最も恨んでいるのは裏切り者の私だろう。一人で苦戦を強いられているとジョーカーさんが私と敵の間に割り込んできた。

「相変わらず、どこにでも駆けつけてくれますねっ……!!」

「貴女だけの執事ですから!」

私が白夜兵を斬りさくとジョーカーさんが彼らの足へ暗器で刺し、動けなくする。1通り方がつき、お互いに一息吐くとこれからどうするかと辺りに敵がいないかを確認して現在の居場所を確かめる。
マークス兄さん達といるならソレイユは安心だ。問題はどうやってみんなと合流するか……になるが……



「カムイ様っ……!!!!」

「えっ……」

ザクッ!!!!

私が油断していたばかりに、嫌な音が、した
戦場で何度か、聞いた肉を断つ音。



「っジョーカーさん!!!!?」
「ッッ……そこか!!」

私を庇ったばかりにジョーカーさんの二の腕に刺さった手裏剣、と呼ばれる暗器をジョーカーさんが抜き取り敵に投げると、その方向からドサッ、と人の倒れる音がした。まだ残党がいたなんて……!

「ジョーカーさん!!大丈夫ですか……!!?」

「ええ……あなたを守れたなら本望です」

私は魔法は使えても癒しの杖は使えない。失礼して執事服を破き患部を見ると、結構な深手を負っていた。
これを治すにはエリーゼさんたちの力が必要だ。早く軍へ戻りましょう!!と心做しか顔色の悪くなっていく彼をつれて急いで来た道を駆けていく。



「カムイ……様っ 」

「大丈夫です、大丈夫ですから、貴方はここで死んでは行けません」

「……嬉しい、お言葉です」


ですがすみません、

その言葉を私の耳が拾う前に、支えていたジョーカーさんが血を吐いて倒れた。



ドサッ、彼が倒れる音だけが嫌に耳にこびり付いた気がした。



「ッッジョーカーさん!!!!!!」






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