しあわせ?


それから、それから

未だに半暗夜王国派が絶え間なく王家を攻め入り、このままだと危険と判断された為、私は娘を星界という時の流れが違う場所で育てて、ある程度自分の身を守れるまでは、と日々を過ごしていた。



「かーさーん!!」

「こらソレイユ!お洗濯中に飛びかからないでといつも言っているでしょう」

出産から2年ほどしか経っていないが、時の流れが違う星界で育ったソレイユは10代半ばまで成長していた。彼女は大きくなるほど彼の……ラズワルドさんの面影が見た目にも……中身にも色濃く現れ、今ではすっかり女性好きだ(そこは似ないで欲しかった)

「そろそろさ、あたしも軍に入れてよー」

「またその話ですか?まだ危ないからダメ、って言ってるでしょう」

「でもさ……あたしだって母さんや父さんを守りたいよ……」

「ソレイユ……」

彼女の気持ちは痛いほどわかる。ずっと城に閉じ込められていた私の面影を感じて、そっと彼女を抱きしめるとソレイユも私に擦り寄った。可愛い娘。だからこそ、危険な場所に……戦場で血で汚れて欲しくなかった。

「それにさ……」

「どうしかしましたか?」

「ジョーカーさんのこと……もあるし……」

「?、ジョーカーさん……?」

娘の、ソレイユの口から意外な名前が出た。私の執事であるジョーカーさんはたまに星界のソレイユの世話をしに来ている。だからソレイユも懐いていたのかな?と聞くと「違うよ」と答えが返ってきた。


「ジョーカーさんと何かありましたか?」

「うーーーん……なんて言えばいいんだろう、なんか、こう、なんていうか……怖い?」

「ジョーカーさんが、ですか?」

「うん、親の敵〜!!位の目で見てくることがあるもん」

「何か失礼なことしてませんよね?」

「してない!!……とは思うんだけど……」


うーん、本人は曖昧な返事だが、ソレイユが何か失礼な事をしたというのは考えにくい。それならばあの執事は私に報告に来るはずだからだ。

私を抱きしめていたソレイユはその手に力が入る。若干痛いが何かに怯える娘を落ち着かせるように背中を撫でるとほっ、と息を吐かれた。



「ジョーカーさんは……なんていうか、母さん見る目も怖いもん」

「怖い……?」


「うん……母さんをどこかに連れってっちゃいそう」

「あら、私はラズワルドさん一筋ですよ、今は」


だが娘があの優秀な執事へ「何か」を恐れているのであれば今後は頼まない方がいいだろうか?
まあそろそろ本人にも身を落ち着かせてほしいしなぁ

そう……元暗夜軍で結婚していないのはジョーカーさんだけとなっていた。フローラさんやフェリシアさんも1度異性として告白したと聞いたが返事は誤魔化されて終わったらしい……昔ラズワルドさんに聞いた「女の人が嫌い」というのは本当なのだろうか。


「分かりました……ディーアさんの例もあるし、あまり近づけないでおきましょうね」

「?、お母さん?」


ディーア、って誰?


?、本当だ。誰でしょうか。
その言葉は私も無意識で言っていたらしく気にしないでくださいとソレイユの私と同じ髪色の頭を撫でた。


最近、ラズワルドさんに言われた通り私は無意識によく意味のわからない何か、を言ってしまうらしい。
直さないとなぁ
ん?治るものなのかな?




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