あなたが幸せならそれで
私は白夜王国攻め入り、大切な……兄弟のタクミさんを……殺してしまった。
「なんで……あんたはそっちにいるんだ!!」彼の悲痛な叫び声が耳にこびりついて離れない。食事も喉を通らなくなり、荒れ果てていた時、それでも傍にいて
慰めてくれたジョーカーさんにキツく当たってしまった。
「私はなんてダメな人間なんでしょうか……」
「人間生きていればそんな事もありますって」
タクミさんたちがいた白夜の籠城を拠点に置いていた暗夜軍は各々休憩をしていた。すると今日は気分転換に、とラズワルドさんが雲一つない星空が広がる花畑に私を無理やり連れ出してくれた。
「……こんな場所あったんですね」
「暗夜じゃなかなか見られない花もあって……気分転換にどうかなって」
ラズワルドさんはこれがシロツメクサでー、と咲いている花の名前を教えてくれる。
随分と詳しいんですね、というと彼は「花が好きなんだ」と笑った。
「ラズワルドさんの香水もお花の香りですよね?」
「あっよくご存知で!これはサルビアっていう花の香りなんです。ここじゃ手に入らなくて僕ももう持っている分だけなんですけどね」
彼が懐から取り出したのはあかい瓶が特徴の香水だった。彼はカムイも、と私にもその香りを振りかけてくれて爽やかな香りが私たちの間に広がった。
「……ラズワルドさんは、何も言わないんですね」
「……僕は女の子を慰めるのあんまり上手くないからね。いつも何故か逃げられちゃうから」
カムイ様は逃げないでね、
キラキラと笑う彼がとても眩しく見えた。
🌹
それから、それから。
白夜王国を攻め入った私たち暗夜軍は勝利した。……本性を表したガロンを倒し、マークス兄さんが暗夜王国の王となった。
……沢山の、沢山の犠牲の上に、だ。
「ジョーカーさん今日はお話があります」
「何でしょうか?」
マークス兄さんの冠位式も終わり、暗夜王国の状況も少し落ち着いてきた頃、私はジョーカーさんを呼び出した。
「私、ラズワルドさんに告白されたんです」
「え……」
「そして、返事はもう決まってます。……この戦いの中で私は沢山彼に励ましてもらいました。心折れそうな中、彼がいたから頑張れたんです」
今までずっとお世話になっていたジョーカーさん。だから私は彼に誰よりも先にこの事を教えたくて貰った指輪を見せた。
「彼の国は、遠い、遠い所にあるみたいなんです。だから私はいつか彼の国に共に行こうと思っています」
「そ、んな、急に……」
ジョーカーさんがあまりにも血の抜けたような顔をするので、「いつかですよ」とまだ未定な事を告げるが彼の顔色は変わらなかった。
「結婚したら、今までみたいに私にだけ尽くさないで貴方の幸せを見つけてくださいね」
それが「私」の望みですから
にこり、笑顔が好きだと言ってくれた彼に私なりの最上級の微笑みを返すと彼は持っていたポットを落として割ってしまった。
そんなに驚かれるなんて……報告が遅れたことは悪いと思っていますよ?
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