愛しているから憎たらしい


結局それから戦争が勝ったとはいえ、一部の暗夜の兵士との反発、それを対応するための白夜王族たちによる交戦が長引き,戦況が落ち着くまでは,と報告を先伸ばしにしていた結果,言い出せたのは妻の妊娠が分かってからだった。

最悪だ。軍の戦力として数えられている妻と俺の身勝手さにこの軍の宰相となる主への罪悪感が胸に痛い。
だが報告しないと、いけない。
それが執事として、夫としての義務だからだ。



「カムイ様…少しお話があるのですがよろしいでしょうか?」

「はい,勿論です。」

最近、戦か続いていたこともあってか休むことが少なかったカムイ様に久しぶりのお茶会を開いていた。
俺の入れた紅茶に笑顔を向けてくれる主人に報告が遅れた事に罪悪感が胸を絞めるが,今日は思いきって言おうと決意を固めていた。
部屋の外では妻も待っている。
ニコニコと俺の言葉の続きを待つカムイ様に俺も決意を固め口を開いた

「ご報告が遅れてしまい,誠に申し訳なく思ってます。…実は……おい入ってくれ」

俺の呼び掛けに少し上擦った声で返事をした彼女がカムイ様の部屋に入ってきた。
そして入ってきた彼女を見てカムイ様は首を傾げた。

「この度私と彼女は婚約を致しました。…彼女は既に子供を身籠っています。戦況が落ち着くまで,とご報告を先伸ばしにしていた事をお許し下さい。」

「………え…,え…?」

カムイ様から,笑顔が消えた。








暇を与えます。

何処か冷えた声でそう告げた彼女の瞳には光が宿っていなかった。

「っカムイ様!ご報告が遅れた事は本当に申し訳ありません!」

「ジョーカーさん,私は怒っている訳ではありません。……確かに驚きはしてます。ですが貴方は私の執事だった時とは違い今は彼女の旦那様でもあります。……妊娠中の彼女を支えてあげて下さい。」

報告が遅れた罰は以上です。



カムイ様のあの鈴の鳴るようなお声が、とても冷たいものに聞こえた。





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