助けて
マークス様を……そしてガロン王破った白夜は暗夜王国との戦争に休止符を打って数日が経った。
俺は戦記が落ち着いているうちにすぐに行動に移した方がいいと、俺は部屋に"彼女"をよんだ。
指輪を渡すのを思い浮かべた人だ。
好きだ,この先ずっと一緒に居て欲しい。
王道な台詞だがそれに嘘偽りはない。
そう告げた俺に照れ臭そうに笑顔を返して指輪を受け取ってくれた彼女は俺の求婚を承諾してくれた。そんな彼女に俺も思わず頬が緩んだ。
ああ,良かった。人生でこれほど緊張したことはない。
そっと彼女の腰に手を回すと彼女もそれに答えるように俺の首へ手を回してきた。
そして、口づけを交わそうとした瞬間一瞬だけカムイ様の,あの泣きそうな顔が過った。
「好きです……好きなんです」やめろ。違う。
これで良かったんだ。
そうだ。
俺はもう何も考えたくなくてそのまま目の前の彼女の唇に貪るように口づけをした。
あの方も,これで,救われるのだ。
俺の選択は正しいと思いたくて、全てを見なかったことにした。
🌸
連日の朝より怠惰感のある体を起こすと隣には幸せそうに眠る妻となる人が自分と同じく裸で静かに寝息をたてていた。
ああそうか,昨日そのまま流れで部屋に呼んでしまったんだ。
柔らかい髪の毛を撫でると,身を捩る彼女を尻目に落ちていたワイシャツを這おって朝の準備を始めた。
彼女の方はきっとまだ体が辛いだろう。朝御飯ぐらいは作ってやるか…
滅多に使わない部屋の台所に立つと,主人以外の為の食事を久しぶりに作り始めた。
「近い内に,カムイ様に挨拶に行くぞ。」
朝食を共に食べている際に俺がそう言うと,驚いた顔をして恥ずかしそうに彼女は頷いた。
結婚の報告をしに行く,そう言うと彼女は更に顔を赤くした。
……だが本来なら,逆だ。
本当は主人の了承を得て求婚をするべきだったのだ。
だが今のカムイ様にその事を言うのは何処か気まずく,結果として今に至ってしまった。
俺の心境を察したのか顔色を伺ってくる彼女の頬を撫でた。
「…大丈夫だ。あの方はきっと祝福してくださる。」
そうだ,彼女は優しいから,きっと。
「好きなんです、貴方が……」どうかしたの?、そう言われはっ、と現実に戻る。
「何でもない、いいからさっさと食え」と無理やり皿を進めさせると空いた食器をキッチンへ持っていき汚れと共に「その記憶」を洗い流した。
そうだ、
あれは「忘れなければ」
それが一番いい選択肢なのだから。
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