モヤモヤする気持ち [ 27/156 ]
アイゼンが漂流して14日目、つまり二週間が経ったが相変わらず船が通る気配もなく、アイゼンの不運が心配で結局まだ共に過ごしていた。
その日も浜辺で船が通りかかっていないか使える漂流物はないか共に歩いていた時だった。
「これは………」
「ん?どうしたの?」
アイゼンが急に立ち止まり、何かを拾った。気になって覗き込むとそれは小さな金貨を持っていた。
「これは珍しいものだな…裏がダオス、表が女神マーテルと言うことはカーラーン金貨か」
「マーテルってユグドラシル戦記の?」
「そうだ。知っているのか?」
「うん、たまに本とかの漂流物もあってね、いろいろ見てるんだ。知識は偏っているけどね」
「ならこれが特別な金属で出来ている事は知っているか?」
「えっなになに知らない!教えて!」
「ふっ…いいだろう。まずこの金貨はーーーー」
その日学習したことはシンフォニア戦記の歴史とアイゼンに迂闊に説明を求めては行けないという教訓だったことをここに記しておく。……ちなみにアイゼンによる女神マーテルと勇者ミトスの世界再生の話は日が暮れるまで続いた。
「ーーーという訳だ。どうだこの金貨の価値が分かったか?」
「うん金貨も凄いけどシンフォニア戦記ってすごい深い内容だったんだね。ラタトスク神伝と話が繋がっていたのは初耳だったよ」
「!…ああ、俺もそれを知った時はド肝を抜かされた。ちなみに契約を交わしたというルアルディの血族はだな……」
「アイゼンストーーップ!!もう日が暮れているから、ね!!続きは明日にしようか!」
聞いていて興味深い話もあったので思わず聞きいってしまったがこれ以上時間が経つと流石に夜のご飯が取れなくなってしまう。
慌ててアイゼンの口を塞ぐとちょっと残念そうな顔をされる。
「む……そうか。もうそんな時間になっていたか」
「そうだね…続きはまた聞かせてね。とりあえずご飯取りに行こうよ!」
「そうだな。暗くなっているから気をつけろ」
「うん、アイゼンがね」
言うようになったなとアイゼンの大きな手で頭をぐしゃぐしゃに撫でられる。この頭を撫でるという行為は家族にもされたことないのでちょっと恥ずかしいけどすごく嬉しかった。
アイゼンが座っていた流木から立ち上がると私もジャングルへ果物を探しに行くね、とずっと座っていた体を伸ばしてジャングルの方へ足を向けた。
「……流石に暗い夜道だ。一緒に行くか?」
「大丈夫だって。アイゼンこそ夜の海は危険だから気をつけてね」
陸では夜目はあまり効かないので見えにくいが雲一つないので月明かりが明るく、夜と言っても結構明るいので大丈夫と告げるとアイゼンはため息を吐いて何かあったら呼べ、と自作の釣竿(6本目)を持って海の方へ魚を取りに行った。
「心配症だなー……」
以前ちょっと聞いたがアイゼンには妹がいると言っていた。きっとその妹に私を重ねているのだろう……
でも……それは、なんか、嫌だな…
「……………?」
なんか、いま、すこし
モヤッとした気がする。
「お姉ちゃんの事思い出しちゃったのかな……、ううんそれより今はアイゼンの為に果物取ってこないと…。」
アイゼンの事も心配だ(不運なので)
早く済ませようといつもココナッツが実っているヤシの木が生えている場所へモヤモヤする気持ちを感じつつ駆けた。