Helianthus Annuus | ナノ
ローグレスへの道 [ 85/156 ]

「ん……」

「………………」

さらり、青みがかった髪の毛を撫でて髪の毛を流すとそこに耳はない。酷い傷だ。片耳が無くなっている。

人魚の血肉は特別だ。と、再三言われていた。だからあの人が欲したのだ。
だが今はそれを見てなにも言わないまま、彼女のはだけた毛布だけかけ直して自身のベットに戻った。


🌻


「応!随分遅いな」

「おはよ……ろくろ……」

「エリアス、あんた朝に弱すぎじゃない?三回は起こしたわよ」

ふらふら、と一階に降りていくと男性陣はみんな準備が終わり、宿屋のフロントで待っていた。
……人間の習性が身についているんだなぁ。そう思いながらアイゼンに貰ったバレッタで髪を留めた。

「そう言えばエリアスは監獄塔でもよく寝ていたな」

「……ロクロウ達はタイタニアから脱獄してきたの……?」


そうだっけ?と首を傾げているとライフィセットが恐る恐る、そう訪ねてきた。ベルベット達は話してなかったのか。そっかライフィセットとは脱獄した後に行動していたもんな……と思い出すが、そもそも三人とライフィセットはどうやって出会ったのだろうか?言われてみれば私もアイゼン以外のみんな事全然知らないな……と言うことでライフィセットに王都に向かいながら話すことになった。

「なんだ?もしかして俺たちが悪い奴らだとでも思っているのか?」

「えっと…………」

「心配するな、物凄い悪いヤツだぞ。少なくとも俺はな!」

「言い切った……。えっと……私は……聖寮の勘違い……?で捕まったというか……」

「儂は善人じゃよ♪」

きゃぴ☆会話に乗り込んできたマギルゥが笑顔でライフィセットに迫るが、彼はたじたじとしている。
「心も身体も清らかな白百合の乙女と、全聖寮を震撼させておったのがこの儂じゃ。そんな儂が何故監獄島というこの世の……」等と語り始めたのでライフィセットは「ベルベットはどうなのかな?」と会話をぶった切った。

「ベルベットのことは、俺は全く聞いてないんだよなぁただ聖寮の誰かに強い恨みを抱いてるらしいってことはなんとなくは知ってはいるんだが」

「こらぁ!!スルーするでない!」

チラリ、と先頭を歩くベルベットを見る。彼女はローグレスで行われる式典に間に合わせたいらしく、速歩で突き進んでいる為こちらの話は聞こえていないらしい。
監獄島で出会った時から彼女は何かに追い詰められている様な顔をすることがあった。その理由はロクロウもマギルゥも知らない、と言ってライフィセットは目を伏せて「そっか……」と呟いた。

「俺はベルベットに恩返し兼聖寮に居る"奴"を撃ちたい。アイゼンとリアはアイフリードを連れていったという聖寮の奴に用がある。ベルベットも聖寮の奴に復讐。な?バラバラだが一箇所に目的があるって事でいいと思うぞ。それがみんな脱獄してまで叶えなきゃ行けない事なんだろ」

「儂は?!儂のことはいいのかえ?!」

「マギルゥは確か裏切り者……?を探してるって言ってたよね……?」

「そうじゃ〜なんじゃ、お主ちゃっかりちゃんと覚えておるの〜!」

よーしよし!!と動物の私の頭を撫で回される。髪の毛が……と思っているとアイゼンがやめろ、とマギルゥの独特の帽子を潰すように彼女の頭を鷲づかんで、「まもなく着くぞ」とアイゼンがその先に見えている壁を指した。

「おっきい壁……!」

「あれがこの国の王都、ローグレスだ。巨大な城壁で街を囲み、業魔の侵入を防いでいる」


ライフィセットはすっかり城壁に目を奪われている。
確かにその大きな壁は高く、頑丈に造られていて尚且つ所々意匠を凝らしている。王都、という人が住む都らしい仰々しい壮観だ。

「初めてじゃないだろ、ライフィセット?」

「う、うん。前にも来たことあるけど、その時は僕は今みたいじゃなかったから……」

「そうか……退魔士に使役されている聖隷は景色を見ることすらままならないんだな」

「次にままならなくなるのは儂らじゃがのぅ」

「どういう意味……?」

マギルゥのニヤニヤと笑う意図が読めずに首を傾げると「王家も聖寮の本部もある国の中枢じゃ」とアイゼンに潰された帽子を整えながら壁を見る。

「儂とベルベットとロクロウとエリアスは脱獄犯じゃしアイゼンは海賊じゃぞ?」

「応。ライフィセット以外は完璧なお尋ね者だな」

「ふかこうりょく……」

「お主は捕まってなくても海賊といる地点で同罪じゃろ」

ライフィセットもヘラヴィーサから逃げてる地点でグレーゾーンじゃぞ☆とウィンクするが話を聞けば聞くほど私たちには居場所のない国に聞こえてくる。大丈夫だろうか……?

「国……入れる……?」

「居場所なんてなくていいわ。……アルトリウスの居場所さえ分かれば、それで」

真っ直ぐ突き進んでいた、ベルベットがこちらを睨んだ。
余計な話をするな、とその視線で訴えかけてくる。アイゼンも、さっさと行くぞ、と急かしてきたので少し速歩で後を追うとローグレスの入口に、人だかりができていた。

アイゼン曰く、「検問」だそうだ。


「……大丈夫、かな」

「全員を調べるものじゃない。自然にかわすぞ」



チラリ、後ろを見る。
いや、怪しすぎないかな?……特にマギルゥ……

もう一度「大丈夫かな……」と呟くと「女は度胸だぞ」と謎の応援(?)をされたけど、違うそうじゃない(気がした)
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