Blur

 デスクの上に倒れこみながらも俺の背中に腕を回して必死でしがみつく姿は、ひどく扇情的だった。神戸が着ていたブラウスやスカートは足元に散乱していて、オフィスの風景とはそぐわない。誰が見ているはずもないから隠そうなどとは端から思っていないものの、淫靡に俺を誘う神戸の姿はそこらの男に見せるにはもったいないように思える。そんなこと、死んでも口には出さないつもりだが。

「お願い…はよ、して?」

 散々焦らされたことにもう耐えられないようで、神戸は俺の胸に顔をうずめながらそう懇願した。プライドの高いこの女がここまで言うのも珍しい。彼女の太ももを伝う生暖かい愛液は俺のズボンまで濡らしている。彼女の中の奥深くまで入れていた指を抜くと、神戸はびくりと震えてより強く俺のシャツをつかんだ。散々かき回したせいで俺の指は彼女の愛液で濡れていて、神戸の口に強引に突っ込むと眉を寄せながらも神戸は舌を使って丁寧に舐めとった。
 片手でベルトを外しつつ、一応扉の方をちらりと見ておく。今日は会議もなければ何らかの面会のアポイントメントもない。あえて言うなら神戸との「面会」だけ。表向きの理由は適当にごまかして書類に書いていたはずだから、役人が怪しむこともないだろう。さすがに真昼間からホテルにまで行ってしまえばバレる可能性は格段に高くなるだろうが、そこまで互いに馬鹿にはなりきれない。俗に恋人という関係だとしても、相手を最優先にして我を忘れるほどではない。どこか頭の隅では冷静なのは、いつかはこの関係に飽きるような気がしているからか。
 神戸の腰を引き寄せてより密着する体勢になると、それまで抑えていた彼女の嬌声が少し大きくなった。デスクに神戸を押し倒して腰を振りながら、ぼんやりとこの始末をどうしたものかと考える。普段の仕事場で事に及ばなければならなかったのが必然とはいえ、明日からここで仕事をするたびに神戸のことを思い出さなければならないのは少し癪に障る。俺だけが彼女に支配されているような状態が気に食わないのかもしれない。いつどこであろうとも、俺が神戸を想っている以上に神戸が俺を想っていなければ納得できない。
 とっくに達したらしく荒い息をついている神戸の腕をつかんでうつぶせにさせる。彼女はいつもこの体位を嫌がるものの、今は抵抗する力さえないらしく大人しく両手をデスクについた。その後姿は俺を欲情させるのに充分で、本能に忠実に腰を打ち付ければ神戸の足ががくがくと震える。真っ赤になってうつむいているその様子も、足の間から精液と愛液を垂れ流している卑猥な光景も、無意識だろうが苛立つほどに俺を煽っていた。中に射精してから自身を引き抜いて、デスクに倒れてぐったりとしている神戸にそれを咥えさせた。噛むなと今まで何度も言い聞かせたつもりだが、神戸はわざと軽く噛んで俺が顔をしかめるのを楽しんでいた。そっちがそのつもりなら、こちらが我慢してやるいわれもない。腰を動かしてより神戸の口内を蹂躙しながら達してしまいそうになるギリギリまで彼女の苦しげな表情を堪能する。神戸が口を離そうとする前にその口内に出して、むせている神戸をよそにティッシュで軽く後始末をしてからベルトを閉め直して衣服を整えた。吐き出さずに飲み込んだらしく、神戸は「苦い」と文句を言いつつ足元に落ちている衣服を拾った。

「ああもう、ぐっちゃぐちゃやん」

 ぶつぶつ不満を言いながらも神戸はきっちりと服を着ていた。鞄の中から取り出した化粧ポーチを取り出して化粧直しをし出した彼女はもうすっかりついさっきのことを忘れたようにそれに没頭している。この時間がやたらと長いのは経験からわかっている。待つついでにポケットから携帯を開いて時間を確認する。予定より三十分ほど早いものの、神戸の化粧にかかる時間を考えれば早すぎるということはないだろう。ぱちん、とファンデーションのケースを閉める音が聞こえた。さて、あと彼女がチークやアイシャドウを塗って、口紅を引くまで何分かかることやら。




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