act 4

「―――血」
シンとなった部屋で、ぽつりと神楽が言うと、沖田は頬の血を手の甲で拭った。
「こんなのはいつもの事でィ」

言葉に棘があるように聞こえるのは、まだ不機嫌さが残っているからだろうか。
「あり……がとう。助かったアル」
思わず着物を握り締めた。

「いや、俺も頼まれて来ただけでさァ」
「たの……み?」
あぁ、やっぱり。
もしかしたらと思っていた。じゃなきゃ沖田がこんな所に来るはずがない。
分かっていたけれど、それでもやっぱり、本人の口から聞いてしまうと――――。
神楽の様子に沖田は気付かず言葉を続ける。

「姐さんからの頼みじゃ、近藤さんは断れねーだろィ。ただ単に俺が今回駆りだされたって事でさァ。まぁ、オメーも普段は強ぇー強ぇって自分じゃ言ってっけど、あれだけの男に組し敷かれてちゃわけないですぜ。もいっぺん、修行のやり直しをした方がいいんじゃねーか?」

鼻で笑った沖田の顔が、神楽の瞳に焼きついた。
そしてそれはとてもショックな言葉で、一気に神楽の喉は焦げ付き、言葉を失わせた。
瞳にじんわりと涙が浮かんだ。それを神楽はぐっと堪えた。涙を見せたくない。キョロキョロと目を動かし涙を散らせる。

「そ、そうアルな……うん……修行もいいかもしれないアル……」
語尾は鼻がかった言葉でかすれた。
(もう無理ヨ……)
神楽は沖田に背を向けた。

沖田は汚してしまった畳を、自身のスカーフをしゅるしゅるととき、擦った。
当然落ちない血痕をどうしたものかと頭を悩ませている沖田の背中に、神楽の足音だけが響いた。





・・・・To Be Continued・・・・・



 



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