act 29

神楽達は、朝食を済ませ、バスで揺られること一時間半、その場所、【歴史・展覧館】 へと、到着した。
室内、野外と、その両方でイベントが行われているらしく、まずはそのどちらに行こうか、そしてどうやって行動をするかと、話し合っていた。

とは言えど、沖田の中では、すでに答えは決まっている様で。
でも、神楽はと言えば、そんな沖田の気持ちには、まだまだついていけない様で。

「みんなと、一緒がいいアル」
ぼそりと出された神楽の言葉だったけれど、せっかく神楽と二人でいても、かまわない権利を得る事ができたんだからと、沖田も譲る気はない様だった。

「わらわら歩いてりゃ、迷惑になりやすぜ」
もっともな意見を返す沖田に、神楽は返す言葉がないと頷くしかなかった。




そんな事で、なかば強引に二人きりにさせられてしまい、神楽の緊張はピークに達しようとしていた。
沖田がまず選んだのは、館内に何箇所かあるひとつ、飲食店だった。
この選択肢は、大いに効果があり、神楽の緊張をほぐすのに、もってこいといえた。

彼女の右手には、ピチピチと音を立てながらはじける、イチゴのサイダーがあった。
それをストローで吸い込む。それを沖田が取り上げるまで、なぜ彼が一つしか買わなかったかなど、気づかなかったけれど。

二人がゆっくりと歩いている間にも、見ているだけで、興味を引くものが、沢山あった。
それを横目で通りすぎる。
イチゴのサイダーは、普段自分が飲んでいるサイダーより、ずっと、早くその量を減らしていて……。
喉だって、なんでか、カラカラのまま。


そんな神楽の足が、ふと、無意識のうちにとまった。
それに気づいた沖田が、その視線を追うように重ねた。

そこには、綺麗な振袖が、飾られてあった。

見たこともなく、遠い昔の歴史に存在していた物。

「綺麗アルな――――――」
神楽は、素直に感動している様だった。
「もっと、近くで見てみやすかィ?」
沖田の言葉に、いいの? と神楽は視線で聞いた。ふわりと沖田の手が、神楽の手に、重なった。
恥ずかしそうな神楽の手を引き、沖田はそちらへと歩いて行く。そこは、近藤が、お妙との為にと、チェックしていたひとつの場所でもあった。

偶然だけれど、それは運命のように、二人の足は、進んでいく。




沖田と二人っきりの状態の中、神楽の胸の鼓動は、おさまることなく、加速していた。





……To Be Continued…
 
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