act 28
神楽と銀八、そして沖田のひと悶着によって、そろって寝不足になると言う形で、三日目の朝を迎えたけれど、それは朝食の時間になっても続いていた。
平たく長いテーブルに、神楽のグループと、沖田のグループが、向かい合わせになって座っている。
目の前に食事があるけれど、緊張のあまり神楽は箸が動かない。
それを面白そうに見ている銀八が、神楽にちょっかいを出していて。
「神楽ちゃん、これ旨そうじゃねえの」
神楽の皿から、ひょいとオカズを取り上げる。
「あぁ! 何するアル銀ちゃん!」
その神楽の表情を楽しそうに見ながら、それを口に入れる。
沖田はといえば、ヒクリと喉を鳴らす。お妙達は、もう呆れるしかない様で。
近藤は、沖田の雷が爆発してはイカンとばかりに、話題をふった。
「な、なあ総梧。今日はどこに行く予定か知ってるか?」
どこに行く予定? 確かにそうだ。
動物園は行ったし、寺だって、デパートだって行っている。
思わず沖田の手が止まった。
この行事がたて続く中、それに伴う様に、自身は神楽と、甘い時間を過ごしている。
が、銀八の隣にいる、神楽を見てみる。
本当に、この女が自分の物になったのだろうか? 神楽が感じていた思いを、沖田もまた、感じていて。
自身の唇に触れた感触、あれは確かに本物だった。
なのに、今でも、神楽の隣にいる男に、かなう気がしない。
「沖田?」
自身の目の前には、心配そうに見つめる神楽がいる。
「あ、どこ……ですかねィ」
さすがの沖田であっても、銀八を前にすると、その自信も、粉々になくなってしまって。
まさか、沖田がこんな表情をしている理由が、自分への強い独占欲だなんて、神楽は思いもしない。
いつだって自分の方が、何倍も、好きだ、そう思っているのだから。
(こいつは――――――俺のモンでィ)
その緋色の視線は、まっすぐに銀八へと向けられる。
それにすぐ気づいたのか、銀八の視線も沖田にへと……。
にやり、と、銀八が笑った。
「まったく、からかえば、からかうほど、反応してくれんだからねえ」
楽しくてたまらない、そう顔にかいてある。
神楽の頭を、くしゃりと触ると、「じゃあな」と言い残し、手をひらひらと、そこを後にした。
何がなにやら分からない神楽は、首をかしげ、その後ろ姿を見送っていて。
お妙達といえば、いつもの事だとは思いながらも、沖田の性格を考えた上で、この後の事を想像してしまう。
沖田への一番と、銀八への一番では、その比べる値が違うはず。
なのにこんなにも分かりやすく態度に表すなんて……と。
ため息しか、出てこない……。
せっかく、恋人と言う名を、それぞれが得ることができたのに。
かと言えど、修学旅行も明日が、最終日であって、一緒に居られる時間もながくはなく。
(今日も、一緒に居られるアルか)
こんな可愛らしい事を神楽が、考えて居るなんて思ってもみない沖田は、一人、銀八への嫉妬を燃やしていて。
まだまだ、波乱の予感はある。
そんな中、近藤の席の後ろには、先ほど一人でチェックしていたガイドブックがあった。
そこには、今日行く予定の場所が書いてある。
【歴史・展覧館】
侍をモチーフにした、展覧会をひらいているそうで、その当時の店や家を再現している。そこで学び、そして楽しもうと言う行事のひとつであると言う。
すでに近藤は妄想を繰り広げている様で、先ほどから一人、楽しそうである。
その本の中には、その館で今行われている催し物の特集が掲載されていた。
どうやら近藤は、その雑誌の中で、なにやら興味を引くものがあったらしい。
そしてそれは、真新しく生まれる、騒動の発端になるべくとは、思いもしないようだったが……。
・・・・To Be Continued・・・・・
……To Be Continued…
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