act 23


神楽達は心配でたまらなくて、あの後、少し間を空けてから、職員室へと行った。

既に其処へと戻っていた銀八と目が合うと、沖田達は、もう教室に帰ったと教えてもらった。
じきに朝のホームルームがはじまるからと、神楽達は足を教室へと急がせた。
すると、教室に近くなった所、ちょうど沖田達の声が聞こえてきた。

案外明るい、そしていつもの沖田達の声の調子に神楽達はホッとしたが、まもなく、足が止まった。


「――――で、実際どうなんだ? 気にいらねーンだろ? 沖田よ」
「当たりめぇでさァ。あんな格好……。まったく冗談じゃねー」
高杉の軽い言葉に、沖田の本音。
神楽は愕然とその場に立ちつくした。その隣、そして後ろにと居る、また子達も、その本音に体をかたまらせている。

「まったく……一体ぇ、ありゃぁ、どう言うつもりなのかねぇ? あいつが理解できねーよ」
「そうかァ? いいじゃないか、トシ。俺は似合ってたと思うね! いや、お妙さん限定でっ!」
近藤の声に、土方の声。
どんどんと空気は冷たくなっていく。

「あんなに露出させて……何がギャルだ。呆れて物も言えねーよ」
高杉の声に、また子の唇はきゅっとなった。

確かに、男の本音だったのだろう。
それが似合うか、似合わないかの話ではなかったのだ。様はただの独占欲、つまりは妬きもちの延長戦の話題。
その白い足は、自分だけのモノであって欲しい。
その柔らかい太股は、自分だけが知っていたい……。
言葉は違えど、単純に考えれば、そんな感じだったのだ。

しかし彼女らにしてみれば、たったそれだけの事。そんな風には割り切れなかった。
神楽に、今度こそ、自分達の力で助けたいと思った、その思い。
ほんの少しでも、目立つ自分達の彼の側に並んでも恥ずかしくない様にと頑張った結果。
可愛くなりたい。綺麗になりたい。相応しくなりたい……。

そんな神楽達の思いを、知らず知らずのうちに、沖田達は踏み潰した。

お妙は、腹が立った。
また子は、歯を食いしばった。
ミツバは口を噤み、下唇を噛んだ……。

けれど、何だかんだ言っても、そんな女の子の思いは、結局神楽が一番強かった。
沖田の相応しい彼女になりたい。可愛いって思ってもらいたい。

ほんのちょっと前まで、そんな可愛い子で居られたはずなのに……。
いられた……はず――――――っ。



キュッという、シューズの音が廊下に響いた。
「神楽ちゃんっ!」

すぐに振り返ったお妙の声が、神楽の背に届く。
聞こえている……のは確かなのに、後ろに居るまた子の肩へとぶつかりながらも、神楽はそのまま走り続けた。

教室から目と鼻の先の位置にいたお妙の声は、簡単に沖田の耳へと届いた。
勘のいい沖田は、たった一瞬で、事態を把握させた。振り返ったその瞬間には、机の上に座っていた腰を上げ、床を強く蹴っていた。

沖田が教室から出るとすぐ、走りさる神楽の背が見えた。

後ろ姿しか見えていないはずなのに、沖田には、神楽がどんな表情をしているのかが分かった。
(聞かれちまった――――――っ)
今更そう思っても、仕方のない事だった。でも、神楽にだけはきかれたくなかった。



走りながら、神楽は頬に流れた涙を、必死に拭う。
でも、どんなにぬぐっても、後から、後から、涙はあふれてきてしまい、彼女の掌を濡らした。

ぐんぐんと沖田は神楽との間を詰めていく。一瞬、向こう側から歩いてくる銀八と視線を交わした。
何事もなかったかの様に、歩く銀八。なんだかんだ言っても、神楽を泣かせるのも、涙をふいてやるもの、沖田だと言う事が分かっている様だった。

沖田は、一言だって漏らさない。神楽の名前さえ呼ばなかった。
ただひたすらに神楽の後を追う。神楽との間はほとんどない。
ここにきて、沖田は手を伸ばした。神楽の肩へと、容易に届いた。

刹那、神楽が前のめりに体勢を崩した。
あっと言う間も無かった。
ホームルーム前と言う事で、ほとんどの生徒は教室へと集まっていた。その生徒全員が神楽と沖田の様子を興味ぶかく教室の窓から覗いていた。
その視線の先……。

沖田が神楽と抱え込むようにして、そして、沖田の背を下に、二人して倒れている姿があった……。


・・・・To Be Continued・・・・・


 
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