03.『キューピッド』


廊下で話してたら、いきなり部屋から出てきたリヴァイに凄い剣幕で怒鳴られた。


「ビックリしたー!ほらね?やっぱり『うるせぇ』って怒鳴ってきた!」

「しーッ!!ハンジさん……声のトーン落として下さい、リヴァイ兵長に聞こえちゃいますよ…」


とか言ってるとリヴァイの部屋からドカッとドアを蹴るような音がした。


「あちゃー、凄い怒ってる…。悪気は無いんだけどなぁ。それにしてもエルヴィンまで一緒に怒られちゃったね」

「いや、私は構わないが………」

「あの…………エルヴィン団長……」


その時、エルヴィンの胸にしっかりと抱き寄せられて恥じらい困惑した様子のアサギと、それを見下ろしたエルヴィンの視線が合う。と、同時にパッとエルヴィンが離れた。
いつもは落ち着いたイメージのエルヴィンだけど、案外素早く動けるんだね、ビックリした。


「ッすまない…!リヴァイに驚いてつい抱えてしまった。申し訳無い。」

「いえ……」


何だろう、この二人の初々しい感じが堪らない……!エルヴィンもいつ死ぬか分からないからとか言って『結婚』から逃げてるけど、やっと来た春ってやつなんじゃないのこれ?!間違いないよ!
そして私が恋のキューピッドにならねば誰がやる!!


「……落ち着けハンジ、『キューピッド』なんてしなくていい。アサギがドン引きしている…………」

「え?!何で私の計画バレた!?」

「思ってること全部口から出てきてるからな……」

「じゃ話す手間省けたね、ということで…アサギ、私の部屋じゃなくてエルヴィンの部屋に一泊でもいいけど?」

「ハンジさん…、あの…………」

「ハンジ、お喋りはここまでだ。もう時間も遅い。アサギも疲れただろう、二人とも部屋に戻って休むといい。それに明日は巨人の実験が早朝からあるんじゃなかったのか?」

「そうだった!あぁ、午前様になる前に寝なきゃ…!アサギ、私の部屋はこっちだよ!早く!じゃあねエルヴィン!」

「あ、エルヴィン団長…、おやすみなさい」

「あぁ、おやすみ」


アサギと再会できて、テンション上がってたせいか明日の巨人の実験をすっかり忘れてた!エルヴィンのやつ、それをネタに上手く煙に巻いて逃げたな……しかし焦りは禁物。ゆっくり確実に二人の絆を深めさせるんだ!それにはまずバレないように水面下で計画を……


「さぁ、アサギ!ようこそ、ここが私の部屋だよ!」

「水面下で計画って………」

「……おっと、また言っちゃった?」


キューピッド初心、これくらいの失敗なんて想定内さ。何としても二人を近づけさせてやるんだから…………


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