10/11/05〜10/12/31
ドンキホーテ・ドフラミンゴ

ラズベリー



「ドフラミンゴ、あーん」
「あン?」
 ソファにふんぞり返っているピンクの塊の後ろから、赤い野いちごを差し出す。怪訝そうに振り向こうとしたその口に、ヒョイと突っ込んだ。
「……。何だァ? 酸っぺェなァ」
「美味しそうなラズベリーが売ってたから、タルトにしようと思って」
 口を動かしているドフラミンゴにそう云って笑い、キッチンの方へ向かう。
「おいおい、寂しいじゃねェか」
 後ろからそう聞こえると、体が動かなくなった。
「ちょっと……何すんの」
 すると糸に操られたように体が動き出し、勝手にドフラミンゴの方へと向かう。ソファの前に着けば、その呪縛は解かれる。
「今からタルト作るんだから、あなたと遊んでる暇は無いの」
 手に抱えたラズベリーの入った籠を揺らしながら、溜め息を吐くとドフラミンゴはニヤニヤと笑った。
「タルトもいいが、おれはお前がいいぜ」
「――わっ!」
 構えよ、と腕を引っ張られて、剥き出しの胸元に飛び込んでしまう。慌てて横を向くと、かろうじて無事なラズベリーの籠がゆらゆらと床で揺れていた。
「もう……子供じゃないんだから。放してよ」
 そう云って、ピンクのモフモフを押し返そうとするが、逆にぎゅうと強く抱きしめられてしまう。
「フッフッフ!! それは聞けない話だな……今放したら、お前はタルト作りに夢中になっちまうだろ?」
 お前に逢いたくて、仕事放り出して来たんだからよォ、とゴネたような声が、耳元でくすぐったい。
 大きな体と熱を持った肌から伝わる温もりが心地良くて、目を閉じて肩をすくめる。
「……ちょっとおれに構えよ、そしたらおれにタルトでも何でも作ってやりゃァいい」
 かなり自分本位な言葉に、クスッと笑った。
「じゃあ、構ってあげましょう。ピンク色した大きな鳥さんに」
「フッフッ! あァ、そうしてくれ……!」
 首の後ろに手を回し、短い金の襟足をゆっくりと撫でれば、心得たかのように唇が近付いてくる。
「ね、ラズベリーの花言葉って“深い後悔”と“愛情”なんだって」
 尖ったサングラスに映る自分を見ながら、もう一度キスをねだる。
「へェ……じゃァ、後悔しねェようにおれの愛情を刻みこんでやれって事かァ? フッフフ、フッ!」
 ドフラミンゴはそう笑うと、脇にあった籠から一つラズベリーをつまんだ。
「ほらよ」
 甘酸っぱい果実を口に押し込まれたら、今度は長い長い口付けが待っている。








 Fin.










→→→→→→
 最初はキラーで考えていたのですが、ドフラミンゴがしっくり来ましたね。あ、ちょっとだけ修正しました。なかなかお題から話を考えるのは難しいですが、出来上がっちゃうと嵌るもんだなあ。
 次ページは「ミホーク」です。

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