10/11/05〜10/12/31
ジュラキュール・ミホーク
9cm
タツン! と云う小気味良い音を立てて、ダーツのポイントがボードに突き刺さった。
「……20点」
ミホークにそう告げて、ダーツを抜く。
かなり離れたところにある椅子に足を組んで座り、手首をコキコキ鳴らしているミホークは、点数はさほど気にならないらしく、ただ暇潰しに投げているのかもしれない。
「ダブルブルまで、9cmってとこね」
「……中央を狙っているわけではない」
静かに返ってきた言葉に、そう?と笑う。
「じゃあ、何処を狙っているの?」
殆ど毎晩のように、このダーツバーに通う彼は、客がはけた閉店後にやって来る。
騒ぎもしないし、ゆっくり10セット投げたら帰って行くから、まあいいかと入れてあげていた。
ルールも無視で、やりたいように投げている彼は、ボードを表情も変えずに見据える。
「……何処を、か」
そう云って、またタツン!と中央のダブルブルまで9cmの部分に刺さる。
「何処を狙っている訳でもない――が、」
強いて云えば、とミホークはまた狙う。
「……?」
ヒュッと鋭い音が耳を掠め、小さな風がフッと届く。
「――!」
タツン、と云う音は私のすぐ傍で鳴った。
目を見開いて何も云えずにミホークを見つめれば、ニッと口角が上がる。
「ぬしだ」
その言葉に胸が脈打つ。
ゆっくりと後ろの壁を振り向けば、私から“9cm”のところにダーツが刺さっていた。
「……ミホーク」
「何だ」
突き刺さったダーツのフライトが愛おしく思えて、そっと撫でる。
「練習してた、の?」
「ああ」
どうしてもぬしを手に入れたくてな……と、云ったミホークに歩み寄ると、膝を叩かれるからその上にそっと腰掛ける。
「好きだ」
金色の瞳が私に突き刺さる。
「……私も」
その答えを受けて、フッと笑ったミホークが投げたダーツは見事中央に命中した。
Fin.
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アンタ何やってんねん! と云う感じですが、見事ヒロインのハートを射止めたようです。渋い鷹の目にこんな事やられて惚れるものなのだろうか!? まァ、元から好きかもしれなかったんで、トドメを受けた感じですかね。
拍手ありがとうございました!
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