10/05/18〜10/07/03
サー・クロコダイル
ジレンマ
眠りたい、でも眠りたくない。
そんなジレンマはベッドの上で起きていた。時計はもう深夜三時を過ぎている。
一時間程前に眠りについたけれど、ふと目が覚めてしまった。それはカーテンの隙間から眩しい月明かりが私を照らしていたせいで、カーテンを閉め直せばすぐに眠りにつけそうだったのに。
気付いてしまったのだ、隣で眠る人の寝顔に。
「……可愛い」
クロコダイルの寝顔を見た事が無かったから、その穏やかで静かな寝息を立てる彼の様子に釘付けになってしまった。
眠たいけれど、このまま眠ってしまうのは勿体無い気がして眠れない。
ジッと寝顔を見つめていると、その顔を横切る傷が目に留まる。ふと触りたくなって人差し指をそっと近付けてみた。
「……さっさと眠れ、アホが」
「――!」
その傷に触れる前に、いつの間に起きていたのか彼の右手に掴まれてしまった。
「だって」
「“だって”じゃねェ……何時だと思ってる」
目を閉じたままのクロコダイルは、掴んだ私の手を引いて自分に引き寄せた。そのまま抱き締められると、剥き出しのクロコダイルの胸に顔が押し付けられて若干苦しい。
「それとも何だ……? まだ欲しいのか」
「!? っ、ちが、違う! 眠たかったけど、クロコダイルの寝顔が……!」
どれだけ抗議しようと暴れてみても、クロコダイルの腕の中では何も出来ない。
「分かったからガキは早く寝ろ……」
腕から解放されて子供扱いにムッと睨むけれど、クロコダイルは目を閉じているし、それについさっきの寝顔を思い出したら、ふふっと微笑んでしまった。
「何笑ってやがる」
「んーん、何でもない」
目を閉じたまま少し顔をしかめたクロコダイルが、そっと伸ばしてくる右手に自分の左手を絡める。
「おやすみ、クロコダイル」
胸にキスを落として頭を押し付けると、頭上からはすぐに規則的な寝息が聞こえてきた。
あまり見れないクロコダイルの寝顔が、きっと自分の頭上に浮かんでいると思うと見たくなってしまうけれど、さすがにもう眠らないと本気で一戦始められそうだから、大人しく目を閉じて、降ってくる睡魔に身を任せる事にした。
Fin.
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誰の夢を拍手にしようか迷いましたが。鰐の夢はどうしてもベッドの上で、しかも眠くてまどろんでるのばかり浮かびます。絶対寝顔は可愛いと思います…て云うかこの人眠るのかな……。
拍手ありがとうございました!
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