10/02/01〜10/03/07
サー・クロコダイル
星に願いを
なんだか寝付けなくて、ベッドから出る。カーテンを引いていない窓に寄ると、開ける視界は満天の星空だった。幾つもある窓からは、そこかしこに月明かりが差し込んでいる。
そんな広過ぎる部屋を見渡して溜め息を吐いた。
「クロコダイル……」
呼んだって現れる筈もなく、いつも忙しそうな彼を思い浮かべた。涙が零れそうになるから慌てて星空を見上げる。
「願い、聞こえるかな」
瞬く星を見つめて、バカみたいと自分で思いながらも、胸の前で手を組んだ。
「……クロコダイルが逢いに来てくれますように」
「何くだらねェ事してやがる」
心臓が飛び出るかと思った。
聞き間違う筈もない低い声に、バッと振り向けば、いつの間に部屋に入ったのか、クロコダイルがベッドで葉巻を吹かしていた。
「……いつから?」
「お前が星に夢中になってる時からだ」
クロコダイルはベッドから立ち上がって傍に来たかと思うと、素早く私を抱き上げてベッドに横たえた。
「クロコダイル……?」
私に跨っているクロコダイルの表情は影になって分からない。けれど、何だか瞳が揺れている気がして頬に手を添えた。
「……くだらねェ願い事をするより、もっと望んだらどうだ?」
「え――」
不意にクロコダイルの顔が近付いて目を閉じる。唇に感じた温もりが耳へと移った。
「お前をずっと傍に置いておきてェ。……いいな」
瞬間、我慢していた涙が溢れて、クロコダイルがそっと拭ってくれた。
鼻を啜りながら、それはクロコダイルの願い? と聞くと、「違う」と笑われた。
「お前の願いと、おれの命令だ。星なんかに聞かれてたまるか」
彼らしい物言いに私は小さく笑うと、クロコダイルに抱かれて広い部屋を後にした。
星は一層瞬いていた。
Fin.
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鰐さんでしたー。星に願うよりおれが命令するって云う我侭な鰐さんですが、なんか…ヘタレ?(通常運転)
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