09
鏡で自分の歯を見ている姿は滑稽だろう。ましてやその度に深く溜め息なんて零していたら。
「虫歯か?」
「違ぇよ」
シノの真面目に聞く言葉に溜め息を零す。
「ならば自分の歯などみて何してる?」
「……うるせぇ」
噛み癖がなおらねぇなんていえるか。
「シノくん、キバくん、そろそろ……」
「あぁ」
「おう」
控え目に声を掛けてきたヒナタ返事をする。キバは家に置いてきた彼女のことを忘れるように一度頬を叩き、気合いを入れ直した。
「そんなことをしても無駄だ」
「うっせぇ!」
シノの見透かす目から視線を逸らしてそんなことを叫ぶことしかできない自分の情けなさに嫌気がさした。
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