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確かに私が悪かったのかもしれない。それでも私は怖くて怖くて怖くて、ただ泣くことしかできなかった。
「お前何してんだよ」
「だって」
忍辞めた私は一時引きこもりになった。そして、それを脱した私は行きつけの焼肉屋で働くことにした。
「ちょっと帰るの遅くなっちゃって」
「で、それがどうしてあーなる」
俺、いつも真っ直ぐ帰れって言ってたよな?
キバの目はそう言っていた。
彼が中忍になって私達は一緒に暮らし始めた。「この馬鹿息子を宜しくね」なんて言ってたキバママに「こ、こちらこそ」なんて頭を下げた記憶はまだ新しい。
「その帰りに……」
今日は常連のお客さんが閉店ギリギリまで呑んで食べて騒いでくれたおかげで帰宅時間がいつもより遅くなった。
「First nameちゃん、ごめんね。こんな時間まで」
「いえ、大丈夫です」
店の鍵を掛けて申し訳なさそうに言ったのは店長だ。「長引きそうだか先に上がっていいよ」と言ってくれた店長に「大丈夫です」と言ったのは私だ。
まぁ、こんなに遅くなるとは思わなかったけど。
「家まで送ろうか?」
「あはは、大丈夫ですよ。お疲れさまでした」
優しい店長に頭を下げて家路へとついた。
これでも元忍者のたまご。一般人のあなたより腕っ節に自信あります。
なんて余裕ぶっこいていた罰が当たった。
「ごめんなさい。襲われました」
「許さねぇ」
ちょっ、私が悪いの?
悪いのは襲ってきた方でしょ?
「鈍ってんだよ」
なんて言ったキバは私に襲い掛かってきたのだった。
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