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02

縁側に行けば祖父も調度畑から戻って来たらしく麦わら帽子を傍らに置いて手ぬぐいで汗を拭っていた。


「あ、おじいちゃん」

「おぉ、First name。やっと来たか」

「やっとって、午後になるって言っておいたじゃん」


祖母と祖父の間で胡座をかき、雫の滴るグラスを手にとった。カランと氷が粋な音をたてた。


「あー、生き返る。ありがとう、おばあちゃん」

「おかわりあるからね」


あっという間に飲み干した私に祖母が腰を上げようとしたのを制し、自分で行くと立ち上がる。冷蔵庫分かるかと問われ、それに躊躇なく頷く。幼少期の記憶というものはなかなか優れているのだ。


「そういうことじゃなくてだな。前に来てからいつ振りだ?」


そんなこと言われてもこちとら仕事があったのだよ。冷蔵庫を開ければ麦茶の入っている瓶が一つ二つ三つ。奥の方に缶ジュースを見つけたけど、それはお風呂上りの楽しみにしようと一人勝手に決めて、一番手前の麦茶の瓶を取り出した。


「まえに来たのいつだったかなー?」

「就職してから来たかい?」

「ははは、どうだろ」


首を傾げる祖母に苦笑しつつ、また二人の間に腰を下ろす。「ん」と差し出された祖父のグラスに先に注ぎ、まだ氷の残る自分のグラスにも並々注いだ。


「First nameはもう三十か?」

「またあんたって人は」


祖母が祖父の膝を叩いた。


「まだ二十代だから、おじいちゃん」

「今年で二十八だろ?」

「おばあちゃん、よく覚えてるね」

「孫の歳を忘れちまうほど呆けちゃあいないよ」


なんだろう。無条件の愛だろうか。孫だから当たり前。幸せだなと笑った。


「良い人はいないのか?死ぬまでにFirst nameの結婚式はいけるか?」

「おじいちゃん、残念だね。孝行な孫じゃなくてごめんよ」

「First nameは良い子なのにねぇ」


おばあちゃん、さすがにアラサーで良い子は恥ずかしいって。

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