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016

頭重感とともに微かに痛みが走るそれに、目を開けるのも躊躇うぐらいに身体に力が入らなかった。何でこんなにも頭が痛いんだとか、どうして身体が怠いのかはすぐに分かった。

酒の所為だ。

調子に乗って酒を呑んだ昨日の自分を今更恨んだって仕方が無い。温かいココアをブルマさんに入れてもらって、隣にトランクスくんを侍らせて、のんびりしよう。その前に、頭痛薬だな。

なんて、ようやく瞼を開ければ目の前に見慣れた紫陽花色のサラサラな髪。あぁ、一緒に寝てくれたんだ。酒臭くなかったかなとか考えながらも本能的欲求は素直なもので身体が勝手にトランクスくんを求めていた伸ばした指先がもう少しで髪に触れると思った時、流れるように髪が揺れた。


「トランクス、くん?」


顔を挙げた彼は、私の愛する彼と同じ髪、同じ瞳を持っているのに、私の愛する彼じゃなかった。


「だ、れ?」

「あ、すみません。目が覚めたんですね。具合はどうですか?」


知らない笑顔に血の気が引いていくのを感じた。届かなかったままの手を慌てて自分の胸に引き戻し、身体を起こしながら身を引いた。背が壁に当たると同時に頭に鈍い痛みが走る。


「……ッ」

「大丈夫ですか?」

「や!来ないで!」


誰誰誰誰誰、ダレ!?
違う、私の知ってるトランクスくんはこんな人じゃない。こんな顔で笑わない。違う、違うのに、どうして、どうして、どうして、トランクスくんなの?

ただでさえ二日酔いの頭痛に苛まれているというのに、頭の中でこんがらがった糸が、余計に思考回路を鈍くする。


「あ、すみません。いきなりで驚きましたよね?僕」


トランクスです。

嘘。嘘、嘘、嘘、嘘。
あなたはトランクスくんなんかじゃない。嘘をつかないで。トランクスくんは、こんなに、こんなに、そうだ、こんなに、大人じゃない。彼は私に追い付いてなどくれないのだから。

なんて、酷い、冗談なの?


「酷い」

「え?」

「早く追い付いてって言ったけど!こんな、こんなの、酷いよ!」


どうして?どうしてこんなことするの?一瞬の幸福、でもそれは偽り。どうせ、縮まらないのに。


「あの、落ち着いて……」

「ひっ……」


目の前にいる青年トランクスがベッドに足を掛ければ、スプリングが鳴った。現実に引き戻される。自分の今の姿は昨夜のパーティー用の服のまま。肩ははだけ胸元が覗き、乱れたスカートからは剥き出しの太腿が見えていた。


「い、いや、来ないで、来ないでよ!」


私の知っている男の子じゃない男の人は、私にとってただの知らない男の人だった。

怖いよ、トランクスくん。

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