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- ナノ -
015

「First name、大丈夫かな」

「大丈夫よ、さぁ、あんたも皆のところに戻りなさい」


あの後、眠ってしまった少女を寝室に運んだ。ブルマは泪の伝った少女の顔をもう一度振り返り、扉をそっと閉めた。


「ありがとう、ベジータ」

「……」


First nameを運んでくれたベジータに礼を言うも、すぐに背を向けて行ってしまった。あれでFirst nameのことを結構気に入っているから。素直じゃない夫にブルマはくすりと笑った。


「……やっぱり俺、First nameんとこいる」

「今はやめておきなさい」

「でも、でも!First name泣いてた!」

「トランクス」

「First nameが泣いてるのに、First nameが辛そうにしてるのに、First nameが苦しそうにしてるのに、俺が、俺が、護ってあげなきゃ!First name、弱いから!」

「……そう、ね。First nameは弱いわ」

「だから、俺、First nameの傍に……」

「……起こしちゃだめよ?」

「うん!」


息子は嬉しそうに花を咲かせて今来た道を戻ってしまった。その背を見えなくなってからも見ていた。


「ねぇ、ベジータ」

「……」

「そこにいるんでしょ?」

「……なんだ」

「私にはあの子の気持ち分かるわ」

「……」

「独りで老いるのは辛いのよ?」


自嘲めいて笑えば、ふと温もりを感じた。筋肉質な腕が背からブルマを抱き締めていた。


「……すまない」

「ふふふ、あなたが謝るなんて珍しいこともあるのね」

「……」

「あの子たちには酷な未来が待ってるのね」

「心配ない。俺の息子だ」

「……そうね。大丈夫よね、あの子なら。あの子たちなら」


ブルマの瞳に映し出されたのは、はたして二人が寄り添い笑いあっている姿だったのか。それとも……。

今という現実で見れもしない未来を語るのはよそう。今はただ、隣りにある温もりに幸せを感じていようじゃないか。それが、たとえ現実逃避だと言われても。

知るのは神と未来の人間だけ。

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