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014

トランクスくんは一つ歳をとったはずなのに全然私に追い付いてはくれない。どんなに歳を重ねても、この距離だけは縮まないんだ。


「First name?どうした?疲れちゃったか?」

「うーん、疲れちゃったというよりも、酔っ払っちゃった」


あはって笑ながらグラスを上げればトランクスくんの顔はぽかーんとしてしまった。


「あはは、お酒おーいし」

「何だよ。酔っ払いかよ」

「何か言ったー?」

「べ、別に!」

「ふーん。あ、トランクスくんも呑むー?」

「え」


グラスをジッと見つめたまま固まっているトランクスくん。ゆっくりと伸ばしてきた手はグラスに届くことはなかった。


「こぉら、子供に何呑ませようしてんの」

「あ、ブルマさーん」

「だって、誰も付き合ってくれないんだもーん」

「当たり前でしょ。てか、あんたも呑むな。未成年」


グラスをあっさりブルマさんに奪われてしまった。不満を漏らすが、本当はさして不満ではない。思ったよりお酒は美味しくないし、まだまだ私には早いなんて思ってる自分がいた。でも、呑んでないとやってられないなんて言う大人の理不尽な逃げ道も今なら分かる気がしたんだ。


「ひどいなー」

「First name、大丈夫かよ」


虚ろな目で遠く見ながら零せば、彼が心配気に覗き込んでくる。実際、私の瞳には何も映ってはいなかった。


「大丈夫じゃないよ」

「え」

「全然、大丈夫、なんか、じゃ、ないよ」

「First name?」

「どうして」

「……」

「もっと早く追い付いてよ」


もっともっともっと、早く私のところまで来てよ。全然追い付かないよ。早くしないと早くしないと、私、私、私。


「一緒にいられなくなっちゃうよ」


決して追い付かない距離。決して縮まらない距離。決して、届かない距離。

分かってるの。それがどんなに無理な話かなんて。分かってるの、もう子供じゃないもの。分かってる、私と、あなたに、ずっとなんてないわ。

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