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学んだ私はお迎えがきても抵抗をしなくなった。痛くも痒くもないのだ、それなら彼が傷付くぐらいなら、ちゃんと彼がそこで待っていてくれるのなら、私は素直にそれを受けよう。
そう思っているのに、彼は毎度毎度牙を向ける。必死に私を護ろうとしてくれる。
「ほう、お前のポチエナも随分と強くなったようだな」
名前も知らないポケモンを彼が倒したのだ。彼が戦うのは私にお迎えが来た時だけ、そこで着々と経験値を積んでいたようだ。
「すごい」
「何か言ったか?」
「……なにも」
「連れてけ」
若草の男が黒ずくめの男に言い、私はまたあそこに連れていかれる。
「だいじょうぶ、あんり。待ってて」
笑った私に彼の瞳が揺れたことなど私は知らなかった。彼が自分と無力さを責めていたなど。知る由もない。
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