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それか普通だと思っていた。それが私の中の常識だった。だって、彼を認識した時、もう彼と話すことはできたのだから。私が言葉を覚えられたのだって彼が教えてくれたからなのだから。
「ふん、気味の悪い娘だ」
だからそんなこと言われたって何のことを言われてるのか分からなかった。ただ、早くあの暗い楽園に帰って、彼のもふもふの毛に顔を埋めたかった。
「ポケモンと話せるなんて……」
続けられた言葉に、やっぱり首を傾げるしかなかった。
「あんり」
「どうした。何か酷いことでもされたか?」
「ううん、いつもと変わらないよ」
さらっと答えた言葉に彼は低く唸る。
「それより、私があんりと話せるのは可笑しなことなの?」
「……あぁ、外の世界の常識は人間とポケモンが話すことなどできない」
「ふーん」
「驚かないのか?」
「びっくりしてるよ?でも、嬉しいほうがいっぱい」
首を傾げた彼に笑う。
「あなたに、あいをつたえられるもの」
あぁ、愛おしい我が主。
もし、私にあなたと同じ二本の手があれば、いますぐにこの胸に閉じ込めてしまうのに。
もし、私にあなたと同じ牙のない口があればあなたの唇を食べてしまうのに。
あぁ、愛おしい、私のFirst name。
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