02
両手に重ねられた皿を軽々と持ち、テーブルの上に並べたFirst name。ナルトの威勢はしゅんと萎んでいき、そのまま席におさまった。
「相変わらず、元気ですね。うずまきくん」
「え、あ、おうよ!元気だってばよ!」
咎めた時の雰囲気とは打って変わって柔らかい何かがFirst nameの周りを取り巻く。
「First name、ナルトってばあなたのこと忘れてたのよ」
「あはは、私影薄かったから知らなくて当然だよ」
忘れてたではなくて、知らなくてと言ったFirst nameに何だかナルトは申し訳なくなってさらに萎んだ。ちらりとキバを盗み見れば、怒りではなく、呆れたようにナルトを見ていた。そしてまたナルトはこれでもかってくらい萎むことになる。
「秋道くん、注文は大丈夫ですか?」
「ビビンバ三つ!」
「はい」
「あと、俺、ドリンクお代わり」
「承知致しました」
空になったグラスをシカマルから受け取り、さりげなく灰皿を交換してFirst nameは厨房の方へ戻って行った。
「思い出したか?」
シノの問い掛けにナルトは頷いた。正直なところあまり記憶にはない。ただ、そういえば、自分を苗字で呼ぶいつもフードを被った子がいたっけなぐらいだった。
「でも、何でだってばよ」
「あ?何が」
グラスの中でまだ大きな氷を口に含み、ガリガリと咀嚼しながらナルトは拗ねたように零した。その言葉をキバは拾う。
「なんか、どうもしっくり来ないってばよ」
「まぁ、ナルトの言わんとすることも分からないではないな」
「だろ!?だろ!?」
シカマルの同意にナルトの威勢が戻り始めた。テーブルに身を乗り出さんばかりのナルトをサクラが服を掴み止める。
「あんたたちが知らなかっただけでしょー?昔から親密だったわよねー?」
イノのニヤニヤ顔にキバは苛立だしげに頭を掻いた。
「もう良いだろ?俺の話は」
「そうはいかない。ナルトは里にいなかったから何も知らないのだからな」
シノまでナルト側に付いた。ヒナタはおろおろしてるだけだし。どうやらキバに味方はいないらしい。面倒くさせえが座右の銘であるシカマルも我関せずで煙草をふかしているし、どうやらその座右の銘は俺が貰った方が良いようだ。
「あー、俺とFirst nameは……」
「お待たせしましたー」
皆の視線が一斉にFirst nameに降り注ぐ。きょとんとするFirst nameに、皆が分かりやすく落胆した。一方、キバは本当に何かとタイミングの良い自分の女を抱き締めたい衝動に駆られていた。そして、ふと気づく。
「First name、手どうしたんだよ?」
「げ、ばれた」
「あ?」
「ちょっと、お皿割っちゃって」
First nameのことだ、何も考えず素手で処理しようとしたのだろう。何というか、いまいち抜けている彼女にキバ溜息を吐きながら、ばんそこエードの貼られた指を撫でた。
「で、いつ上がるんだよ。もう時間過ぎてるだろ?」
「うん、もう上がるよ。着替えてくるね」
「あぁ」
何だか恋人らしい会話の二人にナルトは居心地が悪くなった。他の皆も興が醒めたようだ。
「あいつ来たら帰んのか?」
「ん?あぁ、悪いな。お前らは続けてろよ」
また新しい煙草に火をつけながら言ったシカマルにキバは残っていたグラスを飲み干した。そして、数分後先程と大して変わらない姿で戻ってきたFirst nameと共にキバは帰って行った。
二人の後ろ姿を羨ましそうに眺めていたのがバレバレだったらしく、サクラにナルトが小突かれたのは言うまでもない。
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