013
わいわいするのは実はそんなに嫌いじゃない。ここにいる人たちは本当に気持ちの良い人間ばかりだ。今日ここに来て本当に良かったと思う。
トランクスくんが悟天くんと何やらイタズラしているのを私はグラス片手に眺めていた。するとビーデルさんが隣に腰掛けた。
「驚いたわよ」
「あはは、ごめんね」
「あなたは知ってたみたいね」
「まぁね。トランクスくんからよく戦士の話とか聞いてたし」
悟飯くんも薄々気付いていたようだし、自分だけが知らなかったことが不満なようだ。そこは、お嬢様だよなと思う。
「まぁ、いいわ」
「いいんだ?」
「いいのよ。許してあげる」
「あはは、ありがとうございます」
ビーデルさんには敵わないなぁ。
「ねぇ、まさか本気じゃないわよね?」
「え、なにが?」
顔を覗き込むように聞いてきた彼女に何のことだと視線を向ける。そこには予想外に真面目な顔をした彼女がいた。
「まさか本気でトランクスくんのこと好きなんじゃないでしょうね?」
「え、好きだよ?」
「真面目に答えて」
ビーデルさんの言葉に鼓動が大きく鳴った。柳のようにかわしてみても、どうやら見逃してはくれないらしい。
「もう遅い」
もう遅いんだ。
「愛しちゃったよ」
泣きそうに言葉を搾り出せば、ビーデルさんに抱き締められた。
「馬鹿な子」
「あはは、知ってる」
零した一粒の雫は見逃してはくれないだろうか?だって、口にしてしまった瞬間、現実と向き合ってしまって、今まで積み上げてきた強がりが崩れてしまったんだもの。
この歳の差の壁は人種の壁よりも高い。
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