02
片手をママに引かれ、もう一方の手はピカチュウのぬいぐるみを掴んでいる。ママが早足で歩くものだから、わたしは大股で必死について行く。ピカチュウのぬいぐるみがブラブラと揺れていた。
「……何、ルカリオ」
突然、ママの腰にあるモンスターボールが光ったと思えば、ママの相棒であるルカリオが飛び出してきた。だからママの足は急に止まり、そんな突然にわたしはママの足に鼻をぶつけた。
ルカリオはチラリとわたしを見たあと、諫めるような視線をママに向けた。
「あ」
それだけでママはルカリオが何を言いたいのか分かったようだ。
「ごめんね。ママ、歩くの速かったね」
「ううん、大丈夫だよ!わたし、全然大丈夫!」
そう言えばママは困ったように笑った。困らせないように言ったのに上手くはいかないもので、わたしはおろおろと視線を泳がせた。
するとルカリオがわたしの頭を撫でた。
「くすくす。ルカリオがあなたは本当に良い子だって」
「本当!?」
目をまん丸にしてルカリオを見れば、こくりと頷いた。
再び繋がれたママの手。ルカリオがモンスターボールに戻されることはなく、心なしか歩調がゆるまった親子の背を眺めてルカリオ自身逸る気持ちを抑え込んだのだった。
[ 119/141 ][*prev] [next#]
[目次]
[栞]