06
思ったよりも長引いた任務。家の食糧は尽きかけているだろう。こんなこともあろうかとあらかじめ余分には貯蔵してあるが、心配なのには変わらない。
「First name、飯行くか?」
「ううん、帰る」
「あぁ、姉さんか」
「……うん」
「買い物して帰るんだろ?付き合う」
「いいの?」
「今更」
「うん、ありがとう」
サザンカはアカデミー時代からの友人であり、同班の仲間であり、盟友だった。私の家の事情を知る数少ない人。
両親がいないことを今更嘆くような子どもじゃない。自分の境遇が可哀想だと訴える女々しい女でもない。
だって、今の世の中そんなこと珍しくもない。だって、このサザンカだって同じようなものだから。
「うちで食べてく?」
「いや、いい」
サザンカは姉が苦手だった。きっとアカデミー生だった頃のトラウマだろう。
「おい」
「んー?」
八百屋の前で青々とした野菜に手を伸ばした時、肩を叩かれた。
「あれ」
「……え」
そこには笑う姉の姿があった。
あんなに、あんなに、私には見せてくれなかったそれがそこにはあった。
「おい、First name」
焦ったようなサザンカの声も、制止する手も払って私は姉の元へと向った。
きっと、私の表情は悲しみでも怒りでもなく、無だった。
「カラナちゃん、今日は身体の調子良いの?」
「はい、大丈夫です」
「そうかい、そりゃあ良かった。そういえば最近First nameちゃんの方を見ないね」
「あぁ、あの子は仕事だから」
「忍の仕事が大変なのは分かるけど、First nameちゃん雰囲気変わったよなぁ。昔はニコニコ笑って可愛かったのに。少しはカラナちゃんを見習って、なぁ?」
「そうね、あの子ったらすっかり男らしくなっちゃって。でもあの子、心配性みたいでいたら私外に出させてくれないから、いないとちょっと清々する、なんて」
「あはは!First nameちゃんは昔からお姉ちゃんっ子だったもんな!」
あぁ、もう、本当。
死んでくれないかな?
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