04
額当てとは名ばかりで額に付けていない者も多い。私もそのうちの一人であり、長い布に付け替え腰に巻いていた。それはポーチに隠れて見えなくなっている。意図的にだが。
「First name、っておい。また見てんのかよ」
「うっさい」
任務のはなく修行の合間の一休み。私は修行の場から姿を消していた。朝、小耳に挟んだのだ。彼が任務から帰ってくると。
「休憩終わんぞ」
「え、もう?」
「お前な……まさかまた飯食ってねぇのかよ」
傍に置かれたままの弁当に、わざわざ呼びに来た同じ班のサザンカが訝しげに眉を潜めた。
「忘れてた」
「食え」
「いいよ、修行始まるんでしょ?」
ちょうど視線の先の彼も立ち上がったところで、私もと汚れたお尻を叩きながら立ち上がった。
「駄目だ、また倒れるだろーが」
「えー」
ふと彼の片目と視線が重なった気がした。最近そういうことがよくある。私は小さく頭を下げて、背を向けた。
彼ほどの忍、私なんかの気配殺しじゃすぐに見つかるのも当たり前か。
「本当好きだな」
「うん」
否定などしなかった。
あの日アカデミーを卒業した少女は今、中忍となり日々任務をこなしていた。
そしてあの日、家を飛び出した先で、偶然出逢った彼に、私は恋に落ちた。
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