暴露話は時と場所を考えよう


◇恋人だった副会長にフラれた会長の話。アンチ王道。




「親衛隊をセフレにしてるなんて最低だ!そんなことしてないで、ちゃんと仕事しろよ!」と、生徒たちがひしめく食堂で叫んだのは、二週間前にやってきた編入生だった。

 別名マリモ。そして、その背後に騎士よろしくずらりと並ぶのは、生徒会役員――俺の仲間だった奴らだ。

 特に、二週間前まで俺の恋人であった副会長は、嘲るような視線を俺に向けてくる。まあ、俺もよくここまで我慢したもんだよな……と、ちょっと遠い目をした。

 失恋のショック?んなもん、マリモにデレデレするあいつを見てたら冷めたわ。人を散々歯の浮くような台詞で口説いてきたくせに。

 その間もぎゃあぎゃあとマリモが騒ぐので、しかたなく俺は口を開いた。このままじゃ、他の生徒たちがゆっくり飯も食えねぇからな。

「誤解してるようだが、俺はタチじゃなくてネコだ。てめぇの背後にいるエセ紳士野郎にケツを開発されまくったおかげで、タチじゃイケなくなっちまったんだよ。むしろ、最低なのは俺を散々ヤリまくってポイ捨てした副の方だろーが。俺は被害者だ、被害者。っていうか、誰にんなことを吹き込まれたか知んねぇけど、仕事はちゃんとやってるし。会社を任されてる俺にかかれば、生徒会役員全員の仕事なんざ放課後だけで充分だっての。毎日、八時間睡眠だ馬鹿野郎」

 ははん、と鼻で笑ってやれば、マリモズはぽかーんと間抜けな表情を浮かべた。

 とりあえず、言いたいことは全部言ってやったぜ。俺が満足げに頷いていると、こちらに向かって駆けてくる足音があった。見れば、顔を真っ青にした俺の親衛隊長が肩で荒い息をついている。

「しょ、食堂でなんてこといってんですか、この馬鹿チン!考えなし!ただでさえ、最近はタチに狙われやすいっていうのにっ」

「ふん。そんなもの、てめぇらが体を張って頑張ればいいだけの話だろーが」

「頑張ってますよ!おかげで、うちの親衛隊は小柄なのに腕っ節に自信がある子たちの集まりになっちゃいましたよ!あの可憐な副隊長なんて、暇さえあれば腹筋してるんですからね!お腹だってきれいに割れちゃったくらいですからね!軽くホラーですよ!」

「おおっ、それは凄いな。俺はどんなに頑張っても腹筋割れねぇ……」

「ちょ、しょんぼりしないでください!みんなが見てるじゃないですか!」

 いや、だって頑張ったんだよ。プロテインを飲んで、ムキムキになろうとしたんだけどさ、筋肉がつきにくい体質だったのか痩せるだけで終わっちまったんだよな……。

「なんだお前、筋肉つけてぇの?」

 やたらエロい声が聞こえたと思えば、風紀委員長が扉のところに立っていた。金髪イケメンで筋肉ムキムキ。まさに俺の理想とする人物だ。

 ぜひその筋肉をつける極意を知りたいが、隊長から「風紀委員長には絶対に近付かないでくださいね。ダメですからね、絶対」と耳にタコができるくらい念押しされている。

 でも、ちょっとくらいならいいよな?と、こくこくと頷けば、委員長は思案するように天井を仰いだ。

「教えてやりたいのはやまやまだが……秘伝中の秘伝でな。恋人以外には教えられん。まあ、お前が俺の恋人になるってんなら教えてやらなくもないが」

「マジか!なるなる!」

 だって、今はフリーだし?委員長はカッコイイし、筋肉ムキムキだし。付き合ってから好きになるパターンもありだと思う。俺はネコだから、どっちが女役かで揉めることもない。うん、いいこと尽くめだ。

「あ、でも俺、節操のない奴は嫌い」

「安心しろ。俺は一途だ」

 なら問題ないな。これで俺もムキムキだな!と、にこにこしていると、なぜか食堂の床で隊長が泣き崩れていた。「天才なのに……っ!どうして馬鹿っ子なのっ!」と、よくわからないことを叫んでいる。

「じゃあ、そういうことで俺たち付き合うことになったから。あ、今月分の生徒会の仕事は終わらせてあるから、生徒会室にこなくてもいいぞ」

 本当はこんな奴らいらないんだが、全校集会やイベントの時は人数が必要だからな。その時だけ働いてくれればいい。

「さっそく筋肉のつけかたを教えてくれ」

「ああ。でも、その前に昼飯を食おうな。お前、朝からなにも食ってねぇだろ。食うもんを食わねぇと、筋肉だってつかねぇぞ」

 なるほど。確かに、栄養のある食事は大切だ。今までは面倒だからって栄養補助食品で済ませてたりしたもんなー。さすがムキムキの言うことは違うぜ。

「飯を食ったら、俺の部屋でじっくり教えてやるよ」

「わかった。じゃあ、さっさと食っちまおうぜ」

 恋人になった委員長の腕を引いて、俺は上機嫌に役員席へと向かうのだった。




***END***


あとがき

 浮気副会長×健気会長と思いきや、策士委員長×馬鹿っ子会長でした(笑)

 副会長はマリモの馬鹿っぽさが、会長の馬鹿っぽさに似ていたので惹かれた口です。会長はお馬鹿だけど天才なので、自尊心が傷ついてつい振ってしまいました。

 そして、委員長は筋肉を餌に、見事傷心中(?)の会長を手中に収めました。むろん、会長はこのあと、部屋に連れ込まれてペロリと美味しくいただかれてしまいます(笑)

 副題「筋肉に憧れて」。

- 35 -

[*前] | [次#]

←mainに戻る

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -