王道君はとんでもない爆弾を投下してくれました


◇腐男子会計主人公。




 王道君がやってくるんだよ、キャッホイ!

 そんなキモイ脳内の俺は、チャラ男会計ポジションの隠れ腐男子です。簡単に言うとね、うちの学園に王道君がやってくるんだよー。

 王道学園に、俺様会長や腹黒副会長、寡黙書記に双子補佐まで揃っちゃってるからさぁ、こりゃ絶対に王道君が来るね!って信じ続けて数ヶ月。

 ようやく。ようやく、編入生がやってきます。しかも、会長たちはけっこう有名なチームの総長と幹部をやってて、まさにこれなんてテンプレ?って状態なんだよね。

 うん、わかってる。その編入生は族潰し、もしくは敵対関係にあるチームの総長なんでしょう?それでそれで、みんなで捜してた系なんでしょ?

 最近はアンチ王道が多いけど、会長はものすごくしっかりした人だし、それは副会長たちにも言えること。

 アンチ王道の生徒会役員とはちょっと違う気がするから、王道君に惚れた挙句、仕事を放棄とか、特権の乱用とかはしないと思う。親衛隊との関係も良好だしね。

 セフレもいないし、副会長に至っては自分とこの親衛隊長と中等部の時からラブラブだしねー。

 書記は許嫁の子と毎日メールや電話するくらい熱々だし、双子ちゃんたちは恋愛よりも友達と遊んでる方が楽しいのか、仕事が終わると同時に、寮に猛ダッシュして友人らと某ゲームで狩りに勤しんでるんだってさ。

 会長は不思議とそういう噂を聞かないけど、それは王道君に一途ってことですねわかります。

 そんなわけで、総受けは見られないけど、会長と王道君のじれじれ恋愛模様が楽しめるはず!と俺は朝からうきうきしていた。あまりの浮かれっぷりに、会長が「……熱でもあるのか?」と勘違いしたほどだ。

 危うく保健室に連れて行かれそうになったけど、平熱だと必死にアピールして生徒会室に残留することができた。

 だって、書類に未記入があったからって、副会長が王道君を生徒会室に連れてくる予定なんだよ。そんな美味しい展開を、腐男子として見逃せるわけがないでしょ。

 できるだけ内心を顔に表さないように、それでいてちゃんとチャラく見えるように、俺は必死で頑張った。そして、運命の時が訪れる――

「うわぁ、生徒会室までごーかなんだな!」

「あ、聖良(せいら)。はしゃぎすぎですよ。少しは落ち着いてください」

 おうっふ。初っ端から名前呼びですかありがとうございます。副会長はきょろきょろとあたりを見回す王道君(変装はしてなかった。がっくり)の肩を叩いて、ソファーへと誘導する。

「みんな久し振りだな!」

 にこにこと満面の笑みを浮かべる王道君に、会長をはじめとする役員たちも楽しそうに挨拶する……?あれ?もしかして、知り合いってオチですか?

 いや、でもまだ会長×王道君は健在だからね。この際、予定から外れていても、そこさえ合ってれば問題ないよ。風紀委員長あたりが参戦してきても美味しいよねー。

 ソファーに座った王道君を、俺はできるだけ平静を装って観察した。容姿は親衛隊の隊長さん並みの可愛らしさだ。性格は無邪気っぽいのかな?あと、天然だとなおよしだよ!

 副会長は王道君に陥落した様子はないかな。名前呼びなのは、知り合いだからなんだろうし。まあ、副会長とこの親衛隊長さんとは友達だから、そっちの方が俺としても嬉しいけどね。

 そんな感じで、王道君をじーっと観察していたら、ぱちっと視線が合いました。とりあえず、可愛い子には愛想よくをモットーな俺は反射的に笑みを返す。

 すると、王道君は勢いよくソファーから立ちあがって叫んだ。

「あー!!お前、籐夜(とうや)が一目惚れした奴だな!」

「……………………いやいや、勘違いですよ、ええ」

 ちなみに、藤夜っていうのは会長の名前ね。とりあえず、誤解だと思うので笑顔で訂正しておく。しかし、王道君は追撃の手を緩めない。

「だって、同じ生徒会役員だって言ってたぞ!名前は、えーと、咲乃(さくの)だった!」

「わーお。同じ名前って意外にあるもんだねー」

「そんで、すっごい美人だって言ってたぞ!そーだよな、藤夜!」

 とどめとばかりに、会長に同意を求める王道君。いやいや、まじでそんなはずないから。あはははは、と笑いながら俺は訂正を求めるべく会長へ視線を向けたのだが……。

 そこには、顔を真っ赤に染めた俺様会長がいました。

「あ、もしかしてまだ告白してなかったのか?ごめんな?」と、王道君はあっけらかんと言い放つ。副会長たちは片手で顔を覆って、天を仰いでいた。


 ――王道君はとんでもない爆弾を投下してくれました。




***END***


あとがき

 そして、会長の猛攻が開始されるわけです(笑)

 俺様会長×チャラ男会計(腐男子)が好きすぎて、つい書いてしまいました。こんなパターンもいいと思う。

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