腐男子仲間が○○だった件


◇腐男子(社会人)×腐男子(学生)




 僕は全寮制の男子校に通う腐男子だ。名前はまだ……いや、あるけど、恥ずかしいから言えない。

 秘密の趣味を抱えてはや二年(意外と短い)。全寮制の男子校ひゃっほー!とはしゃいでいたが、僕はある悩みを抱えていた。

 この萌えたぎる情熱を誰かと分かち合いたい……!

 だって、生徒会長は俺様で、副会長は冷笑が似合う美形で、会計はチャラ男だし、書記は寡黙だし双子補佐はまだいないけど、時期会長と目されてるバスケ部のエースと、同じく副会長候補のツンデレ元一匹狼が補佐やってんのよ。

 風紀委員会もあるし、委員長はちょっとワイルドっぽい不良さんだし、その他色々、もうやばくね?という状況だったりする。

 でも、僕は隠れ腐男子。たぶん、一人くらいは志を同じくする戦友がいるとは思うのだが、大っぴらに捜すこともできない。

 しかし、神様は僕を見捨てなかった。

 あれは腐男子歴一年目のこと。僕はとあるチャットで、運命の同志に巡り会った。彼も腐男子で、僕と同じように萌えを語り合える同志を捜していたのだという。僕らはすぐに生来の友人のように意気投合した。

 彼のハンドルネームは、“よっしー”。某ゲームのキャラクターからきたかと思いきや、幼い頃からのあだ名をそのまま使ったのだという。

 ちなみに僕のハンドルネームは、“カズ”。サッカーが好きだからではない。単純に名前の前二文字を取っただけである。

 それから一年間。僕らはチャットやメールでひたすら語り合った。よっしーは社会人五年目の二十七歳なのだそうだ。

 会社には妙に美形が多く、萌がそこかしこに転がっているのだという。学生同士の甘酸っぱい恋愛も好きだけど、大人の爛れた恋模様も好きだよ。

 よっしーは全寮制の学園にハァハァしていた。高校は普通の共学だったそうだ。ノーマルな僕としては、そっちの方が羨ましいけど……。

 とまあ、年齢差はあるけど、僕らは着実に仲を深めていた。そして、とうとう直接会おうという話が持ち上がった。

 僕も会ってみたいという気持ちが大きかったので、二つ返事で了承した。待ち合わせ場所は、学園前からバスで一時間ほどいった場所にある喫茶店。

 新幹線での移動を覚悟していたのだけど、よっしーは僕が通う学園と同じ市内で暮らしていたのだ。すごい偶然。

 どんな人なんだろう……。イメージはちょっと心配性なお兄ちゃんって感じだ。

 風邪をひいたとメールしたら、医者に行った方がいいだの、学校は休めだの、仕事中なんじゃ?と心配になるくらい矢継ぎ早にメールが送られてきたくらいだから、面倒見もいいのだろう。

 バスから降りて、目的の喫茶店に向かう。場所はネットで確認済みだ。徒歩五分ということもあって、すぐに待ち合わせ場所を発見する。時刻は一時十分前。約束の時間は一時だ。ちょうどいい頃合いだろう。

 よっしーはもう来てるかな?

 待ち合わせ場所の喫茶店は、よっしーの幼馴染みが店長をやっているらしい。なので、店長さんに“よっしーと待ち合わせをしている”と言えば席に案内してくれるそうだ。

「あの、その……よっしー、さん、と待ち合わせをしてる、カズですが」

「ああ、君がカズ君ねー。初めまして。よっしーの幼馴染みのりっちゃんです」

 よし、ぜひ受けで。色つきのサングラスが似合うりっちゃんさんは、肩まである茶色の髪をしゅしゅ(←これポイント)で緩く結んだ、甘めフェイス美形だ。

 チャラ男と中性的な美人さんの中間くらい。身長があるから攻めもいいけど、やはりここは受けでしょ。

 初対面での受け攻め判断は、腐っている者のサガだと思う。よっしーはどっちだろう。

 僕としては、世話焼き受けがいいんだけど。あ、そうなるとりっちゃんさんは攻めの方がいいのか?……おっと、つい癖で腐友までネタにするところだった。危ない危ない。

「よっしー。カズ君が来たよー」

 こっちこっち、と手招きしながら案内された先には――ものすごい強面の男性が座っていました。

 丸太のような腕を組み、今し方、人を殺してきました、と言わんばかりの形相で目の前のコーヒーカップを凝視している。え、もしかして、あっち系の人?ヤのつくご職業だったりする?

 僕は足を止めて、りっちゃんさんを見た。

 案内するテーブルを間違っているんじゃなかろうか。しかし、奥の席に座っているのは、その男性一人だけ。目の錯覚かな。青空が広がる外を眺め、もう一度、テーブル席につく男性を見る。うん、リアルゴ○ゴだね!

「よう」

 壮絶な色気を含んだ声が耳朶を震わせる。なにこの歩く十八禁みたいな声は。よくよく見れば、よっしーさんは強面ではあるが、かなりの美形だ。

 目鼻立ちがはっきりとした顔は適度に日に焼けており、シャツにジャケットというラフな格好にも関わらず、ものすごく格好よく見えてしまう。

 髪の毛はスポーツ刈りよりも少し長いくらいか。そして、服の上からでもわかるくらい鍛え上げられた肉体をしている。彼の後ろに「兄貴!」って叫びながら頭を下げる舎弟さんたちの姿が見えるようだよ。

「迷わなかったか?カズ」

 壮絶な色気を振りまきながら微笑む腐友に、僕は顔を真っ赤にしながら頬を引き攣らせた。

 僕の腐男子仲間は、総攻めだったようです。





***END***




◇あとがき

 腐友の職業はIT関係の会社社員です。あっち系の方ではありません。強面美形腐男子攻めを考えすぎて、色々拗らせた結果、こんな話が産まれました。

 仕事のストレスでイライラしていた時に、主人公との出会いで癒やされ、気付いたら好きになっていた腐友さん。絶対に主人公を落とそうと思ってます。

 ちなみに主人公が腐男子になったきっかけは、二次創作。好きな漫画をネット検索したら、二次創作の存在を知って嵌まった系。

 腐友さんは姉が腐女子で、よくサークルの手伝いをさせられていたため、気付いたら腐っていた感じ。

 裏設定で、腐友さんは主人公が通っている学園の風紀委員長とは従兄弟同士だったりします。それと、主人公と会長は幼馴染み。気苦労の多い風紀委員長×ピュアっ子会長もおいしい……。

 あと、補佐二人と主人公はお友達。話が広がる−。

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