腐男子な俺が辿り着いたのは


◇王道学園設定。主人公は二十五歳腐男子。影の司令官を目指したい。




 突然だが、俺は腐っている。

 いや、ナマモノ的な感じの腐ではなく、精神的な腐だ。男同士のにゃんにゃんを見て、ハァハァしてしまう種類の腐だ。ゾンビではない。

 そんな俺の目的は、昔からとある王道学園にあった。王道云々の説明は面倒だから省く。とりあえず、俺はそこに入学したかった。

 そして、心行くまで男同士のにゃんにゃんを観戦したかった。同学年同士もいいが、先輩後輩、教師と生徒の禁断の恋もいい。もくしは、教師同士もありだ。用務員も美味しい。

 ……話が逸れた。そんなわけで、俺は王道学園にこんにちはしたかったのだが、俺自身は絶対にフラグを立てたくなかった。ノーモアフラグ。

 しかし、恐ろしいことに、俺は中身は残念だが、顔だけはいいとよく言われる。“顔だけ”の部分をより強調されて言われる。おかげでストーカー被害にも遭った。ストーカー駄目絶対。愛は押しつけるものではない(でも、溺愛攻めはありだ)。

 男に掘られるなんて死んでもごめんだ。そこで俺は考えに考えた。どうすれば、フラグを回避できるか。どうすれば、ケツを掘られることなく心行くまで萌えを堪能できるか。

 しかし、いつの間にか俺は、王道学園にいかにして侵入しようか悩んでいる間に成人して、大学まで卒業してしまった。そもそもここに編入できるほど頭良くないしな……(俺が得意なのは理数系で、文系は壊滅的だった。作者の気持ちを考えろ?そんなの、締切やべぇの一言だろ)。

 そんな時、俺は幼馴染みを介して、ずっと恋い焦がれてきた王道学園の理事長と出会うことになった。

 学園は数年前までかなり荒れた状態にあった。これは詳しく語るとどんよりしちゃうので省く。

 根本的な原因は、見て見ぬふりをし続けた当時の理事長と教師陣にあった。しかも、加害者から金を受け取って、被害者の訴えをもみ消していたらしい。なんて性根の腐った奴らだ。ムキムキのガチホモ集団に掘られてしまえ。

 さすがに理事会で問題になって、前理事長と教師陣は懲戒免職処分となった。その後任に就いたのが、現理事長である。

 しかし、大人たちの顔ぶれが変わったところで、子供たちの闇まで払拭できるわけではない。当時から比べれば学園の風紀も格段に改善されたのだが、それでも制裁まがいの犯罪行為はなくならなかった。

 そこで理事長の苦悩を間近で見ていた我が幼馴染みが、俺に相談を持ちかけたわけである。腐った知識を総動員した結果、理事長に提案したのは、監視カメラによる二十四時間体制の監視だった。

「南校舎の二階、右端の教室で制裁発生。人数は五名。会計のとこの親衛隊が二名に、ええと、こりゃFクラスの不良だな。そいつらが三名。実力者はいないが、念のためにスタンガンと警棒を携帯するように。すぐに応援を呼んでやるから頑張れよー」

 十二畳ほどの室内。壁一面に備え付けられたモニターには、校内外に設置した監視カメラの映像が映し出されている。その一つに、今まさに制裁を行おうとしている生徒たちの姿が映っていた。制裁うまいです。でも、イジメ駄目絶対。

 そうこうしている間に、風紀委員数名が突入。あ、不良君が逃げた。

「あまーい」

 デスクに置いてあるキーボードを操り、解除キーを入力。エンターキーを押すと同時に、不良君の進行方向にある防災用のシャッターが降りる。

 背後からは風紀委員が迫っているので逃げ場はない。ほどなくして全員が捕まるのを見届け、俺は椅子に背中を預けた。

「やっぱり、今年の風紀委員は質がいいなぁ。風紀委員長が実力者だと、下につく子たちの能力も向上するのかな?」

 とまあ、これが俺のお仕事である。もちろん、プライバシーは守る。これは基本だ。監視カメラが設置されているのは、人目のない場所に限る。空き教室もその一つだ。

 監視カメラの設置はちゃんと親御さんたちにも通達しているので、問題はない。お金持ちの坊ちゃんが多いので、外部からの侵入を警戒する意味もある。予想通り、反対の声は上がらなかったらしい。

 そして、(ここが重要だ)俺はその栄えある監視要員として、理事長に雇われることになった。俺の利益は、まあ、言わなくてもわかるだろう。俺は腐男子だ。その一言で足りる。

 二十四時間体制とは言っているが、基本的に俺の勤務時間は短い。早朝から授業が始まるまでと、昼休み、それに放課後から消灯までの間、この椅子に座っていればいい。

 席を外していても、監視カメラには赤外線センサーが搭載されていて、人が映ると自動的に俺のスマホに映像が送られてくるシステムになっている(ちなみに、設定したのは俺。そういうのが得意なんだよね)。

 なので、生徒たちが授業中の間や夜は、このシステムに切り替えておけば問題ない。その間、俺は食料の買い出しに行ったり、幼馴染みとお茶したり、理事長から恋愛相談を受けたりしている(幼馴染みはツンデレ美人さんだから心配らしいよ。色々と)。

 さっきみたいな制裁や喧嘩の場面を見つけると、すかさず風紀室に連絡。人数やクラス、どの親衛隊かを伝え、彼らの補助もこなす。一応、全校生徒と学園で働く人たちの顔と名前は覚えている。萌のためにも暗記しましたとも、ええ。

 さらに、接点があるのは教員寮の寮監をやってる幼馴染み、理事長、秘書さん、スーパーのレジの人の四人だけ。

 幼馴染は理事長と付き合っているので安全圏。秘書さんとレジの人は、帽子にサングラスとマスクを着用して顔を合わせているので、フラグは立たないと思う。風紀委員の子たちとは、モニター越しの会話をするだけで、ちょくせつ会うこともない。

 それとは別に、学園を警備している警備員さんたちもいるけど、そっちはノータッチ。緊急時はさすがに連携するけどね。用件がある時は、風紀委員か理事長を介して伝えている。

 そんな充実した日々を、俺は送っているわけだ。モニターで萌えは補給できるし、司令官ごっこもできるし、風紀委員の子たちは素直だし、幸せすぎて死にそう。いや、死にませんけど。キリッ。

 まさに、俺の天職とも思える職場だ。さらには、けっこうな額のお給料もいただける。もう、ここに骨を埋めてもいいかもしれない(学園的には迷惑だろうけど)。

「しかも、今年の生徒会と風紀委員会が実に理想的なんだよなぁ……ああ、幸せ」

 腐腐腐腐腐、編入生でも来ないかなぁ。




****END***




あとがき

 全力でフラグ回避にいそしみ、幸せライフを築いた腐男子君の話でした。

 もちろん、回避はできませんよ!年上受けうまい。

 攻め候補は、実は主人公の後輩でストーカーをしていたホスト教師と、生真面目風紀委員長、実は主人公の義理の弟な俺様会長(親が再婚)、秘書さん、兄貴肌の警備主任の五名です。

 警備員さんたちに二十四時間体制の監視をさせなかったのは、理事長的にできるだけ信頼できる相手に任せたかったからです。

 警備員さんたちも人ですからね。信じたいけど、そこはなにがあるかわからない。脅迫されて仕方なく犯罪に手を染める場合だってある。それを警備員さん側もわかっているので、文句は言いません。

 ちなみに、主人公は教師寮の地下に潜伏しています。

 設定だけ思いついたので、小話にしてみました。

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