意外と近くにいるものです


◇学園もの。ガチムチ男前風紀委員長受け。アンチ王道。




 単刀直入に言おう。俺、周防荒夜(すおう・こうや)は生粋のゲイだ。そして、ネコ希望である。

 恋人が欲しかったので、高校はゲイ率が高いと噂の学園(全寮制の男子校)に入学した。しかし、三年目を迎えた今でも恋人ができる気配はない。

 理由は簡単。俺の外見が、不良も土下座するほど厳ついものだからだ。さらに、入学当初、密かに憧れていた先輩が風紀委員長を務めていたため、俺は迷いなく風紀委員に入った。

 褒めて欲しくて頑張った。頑張って頑張って頑張りすぎた結果、俺は誰もが羨むムキムキボディーを手に入れていた。

 むろん、淡い恋心は先輩の卒業と共に散った。……俺の手に、風紀委員長の腕章を残して。

 そう、俺は進級と同時に風紀委員長になってしまったのだ。厳つい外見にムキムキボディー。さらに一癖も二癖もある野郎どもをまとめる男を、誰が抱きたいと思うだろうか。

 反対に抱かれたいと思う奴は腐るほどいるようで、新聞部主催の抱かれたいランキングでは堂々の一位を飾ってしまった。ちなみに抱きたいランキングは圏外だ。

「はぁ……」

 風紀室でデスクに向かい、大量の書類を捌きながら俺は溜息をついた。委員長の仕事は、書類の認可作業が大半だ。

 あとは会議。肉体労働系は一、二年が主体で、食堂で生徒会長でも暴れ出さない限り、俺に出番はない。だからだろうか。性的欲求が溜まって溜まってしかたない。

 しかし、処女で童貞である俺は、右手、もしくは左手で息子を宥める以外の方法を知らなかった。

 後ろにそういった玩具を突っ込んで、というのも考えないわけではないが、その……恐いだろ。未知の世界であるだけに恐ろしくてしかたないのだ。

「お疲れのようですね。顔色がよろしくありませんよ?」

「今はどこも同じだろう。あの編入生のせいで、な」

 副委員長の香坂楓(こうさか・かえで)の労りの言葉に、俺は肩を竦めてみせた。放課後の風紀室には、俺と香坂以外の委員はいない。

 普通ならば、なにがあっても動けるようにと、二、三人は詰めているのだが、今の風紀は猫の手も借りたいほどの忙しさに見舞われているのだ。また、それは他の委員会にも言えることだった。

 美化委員会では園芸部と共同管理していた花壇が荒らされたり、ゴミ拾いの度に編入生に殴られて気絶してる親衛隊(制裁しようとして返り討ちにあったらしい)を拾わされたり。

 図書委員会では図書館で編入生が暴れたせいで甚大な被害が出て、ああ、放送部でも放送室をジャックした編入生のせいで備品に損害が出るといった報告もあったな(なにをやっているんだ)。

 保健委員会は委員が編入生の乱入を恐がり、保険医の手伝いにも支障をきたしているらしい。編入生は校舎をダンジョンと勘違いしているのではないだろうか。

 名前はなんといったか……とりあえず、容姿だけはとてつもなく可愛らしい生徒だった。羨ましい……。

 ただ問題はその性格にあった。自己中心的な性格で、無類の美形好き。むしろ病気なんじゃね?というレベルだ。俺は心の中で、編入生を美形コレクターと呼んでいる。

 そんな美形コレクターに惚れてしまったらしい生徒会役員と、ふざけんじゃねぇぞ!といきり立つ親衛隊。

 さらには普段から鬱憤を溜めていた一部の生徒による便乗犯、お祭り騒ぎと勘違いしている不良どものせいで、学園は混乱の渦にあった。

「そうですね……ところで、生徒会のリコールの件ですが」

「ああ、それもあったな。しかし、どうしたものか」

 生徒会が機能しなくなって、真っ先に被害を受けた風紀は当然リコールを考えた。ところが、そこでリコールに手を貸すといって、とある人物がこっそりと風紀に接触してきたのだ。

「まさか、会長、副会長、会計、書記の四人がリコールへの協力を申し出るとは……」

 四人から別々に、生徒会のリコールに協力する、と申し出られた時はさすがの俺も驚いた。え、編入生に惚れてたんじゃないの?と、思わず訊いてしまったほどだ。

 それは般若のような形相で否定されてしまった。あいつらは仕事を放棄していたわけではなく、時間を問わずに生徒会室に乱入する編入生のせいで仕事ができなかったらしい。

 重要な書類や資料は生徒会室からの持ち出しを禁止されているため、部屋に持って帰って、というわけにはいかなかったようだ。

 あと、編入生に張り付いていたのは、牽制のためとかなんとか言ってたな。そのせいで、四人とも他の役員は編入生に惚れていると思っていたらしい。だからリコールなんて言葉が出たのか。

「でもなぁ。なんで、その見返りが風紀委員への所属なんだ?」

 あいつら、勉強のしすぎで頭をやられたんじゃないだろうか。風紀委員長の座を狙っているのかと訝しんだが、それは四人とも全力で否定されてしまった。

「あいつらが狙っているのは、副委員長の座ですよ」

「俺は香坂以外の副委員長は認めないぞ」

「ありがとうございます」

 現在、二年である香坂には、いずれ風紀委員長の腕章を渡そうと思っている。そのためには副委員長としての実績を積んでもらわねばならない。それに会長と副会長は三年だから、副委員長にはなれないと思うんだが……。

「あいつらはそんなにリコールしてほしいのか?」

 仕事がきつくて辞めたいけど周りの重圧が、ということも考えられた。

「真剣に考えなくても大丈夫ですよ。責任感のない奴は嫌いだ、とでもおっしゃれば一発です」

「そうなのか?」

「はい。目下の問題は編入生と、騒ぎに便乗する愉快犯です。生徒会のことは投げ捨てて、そちらの対策を講じましょう」

 いいのかなぁ……。まあ、香坂がいいというなら問題はないのだろう。それに、生徒会が仕事を放棄している、という疑いも間違いだったわけだしな。




「ライバルは牽制しないと」

「なにか言ったか?」

「いいえ。とりあえず、編入生に肩入れしている理事長からなんとかしましょうか」
 




***END***




◇あとがき

 実は周りには主人公狙いの子がわんさかいたという罠。主人公はガチムチ男前ですが、無駄にエロいです。エロフェロモン全開です。

 実は抱きたいランキングでも上位でしたが、そこは副委員長が裏でもみ消しました。タチにも人気だと知られると、ガードが堅くなりそうだから。生徒会役員も委員長狙いです。

 一応、副委員長×委員長予定。年下攻め。副委員長は知的美人さんですが、脱いだら結構すごいです。身長は委員長よりちょっと低め。委員長が185pで、副委員長は180p。

 生徒会役員は役員になってから委員長と知り合ったので、隙あらば役員を辞めて風紀委員会に入ろうと企んでいました。

 みんな委員長がネコ希望(ウェルカム状態)だとは知りません。
 
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