俺が得たもの、捨てたもの


◆チャラ男大学生×電波?




「ねぇ。俺が未来から来た人間だって言ったらどうする?」

「……また、唐突だねぇ。どうするって言われても、コータはコータだから今まで通りかなぁ。どうして未来からきたの?」

「趣味。ちょっと過去に行ってみたかったの。でも、機械が壊れちゃって、直るまで帰れないんだ。あなたに拾ってもらえて助かったよ」

「え、じゃあ、直ったら未来に帰っちゃうの?」

「帰るって言ったらどうする?」

「もちろん、一緒についてくに決まってんじゃん。コータのいない世界なんて考えられないしー」

「でも、こっちの人たちとは二度と会えないんだよ」

「俺的には、コータと会えない方が大問題」

「ふぅん……。夕飯はしょうが焼きがいいな。味噌汁はワカメね」

「はいはい」




 恋人が台所に向かったのを確認して、俺はクローゼットにある段ボールを開けた。そこには、普通の人間には見慣れない――俺にはよく見慣れた――機械が鎮座している。

 昨日、ようやく修理が終わったそれ。材料を手に入れるだけで、一年もかかってしまった。充電も終わって、あとは機動するだけ……。

「あ、コータ。お風呂やってきてー」

 台所から俺を呼ぶ声。たった半年で、驚くほど心に染みこんでしまった想い。ちくり、と胸に小さな痛みが走る。

「機械は一人用だから、あなたは連れて行けないんだよ……」

 呟き、スイッチを入れる。赤と青が点滅し、赤が消えたら準備は万端。あとは、天辺にある透明な台に触れるだけ。そうすれば、俺は跡形もなく消えてしまう。

 息を吐いて、俺は手を伸ばし――持っていた金槌で機械を叩き壊した。プスプスと音をたてて全壊するそれ。

 脳裏を過ぎるのは、家族や親しい友人たちの顔。ごめんなさい。でも、きっとあなたたちは「小唄だもの。仕方ないね」と、笑ってくれるだろう。俺以上に、この性格を熟知してくれた彼らだから。

 悲しみを閉じ込めるように蓋を戻して、台所へと向かった。そこには、花柄のエプロンをつけ夕飯の準備をする恋人の姿。

 その背中に、ぎゅっと抱きつく。

「大好きだよ」

 あなたと同じくらい、あなたのことが。




***END***




 あとがき

 唐突に思いついたネタです。小話なので、背景等はとっぱらってみました。

 お人好しな攻めは雨の日、受けっ子を拾います。同棲するうちに双方に愛が芽生え、恋人同士に。

 時間移動は身体への負担となるため、一人二回までが限界です。なので、小唄は未来に戻ればそれっきり。悩んだ末に、恋人の元に留まることを選択しました。

 ちなみに小唄は15歳くらいです。未来では天才(ある意味、天災)として名を馳せていました。

 戸籍云々は考えないことにして。不法滞在者だけど、(未来の)国籍は日本だから!

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