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※流血表現があります。苦手な方は気をつけてください。




 白崎の抱き心地を堪能していると、不機嫌そうな西園寺の声が耳朶を打った。

「おいこら。抱きつくなら炎じゃなくて俺にしろ」

「あははは、なんてリアルな幻聴」

 なにが悲しくて、猛獣に抱きつかなきゃいけないんだ。背後に控える陸鬼なら、喜んで抱きつかせてもらうがな。

「で、そいつらとお前の関係は?」

「赤の他人以上、顔見知り未満」

「ふぅん……」

 あ、なんか嫌な予感。

 にやにやと人の悪い笑みを浮かべる西園寺に、俺は逃げ出したい気持ちに駆られた。でも、どうせこいつのことだろうから、逃走経路は塞いでるだろう。ああ、本当に面倒。

「じゃあよ、俺らがそこのチーム潰しても関係ねぇわけだ」

 なんでそうなるんだよ。これだから、俺様は大嫌いだ。俺への当てつけだとわかっていても、呆れてしまう。

「意味わかんないんですけどー」

「それがいやなら、俺とこないだの続きをしろ。そんで、仲間になれ」

「超ムリ。超パス」

 こないだの続きは理解できるけど、なんで仲間になんなきゃいけないの?最近の高校生(不良)って未知すぎて、まじでついていけない。

「幹部の奴らも、満場一致だ。阿修羅は白夜を歓迎する――俺の隣に立て」

 阿修羅、という名にタウゼントの奴らがざわめいた。

 当然だろう。ここいらでナンバーワンのチームが目の前にいるのだから。しかし、一人だけ例外がいたらしい。

 急に肩をぐいっと掴まれ、後ろに引き寄せられた。あ、この体勢って地味に辛い。

「――てめぇなんかに渡すかよ」

 うん、葛城さん。

 どうして、ここで君が張り合うのかな?

 ほら、後ろを見てごらんよ。君の仲間が呆然としてるぞ?

「おいこら。張り合ってんじゃねぇよ」

「違う」

 俺を見下ろす葛城の表情には、困惑と焦りが滲んでいるように見えた。おや?と俺は内心で首を傾げる。いつの間に、警戒を解かれたのだろうか。

「……自分でもわかんねぇ。でも、あんたをあいつに――あいつだけには、渡したくない」

「へぇ、いい度胸じゃねぇか」

 西園寺を挑発すんな!あいつは、たぶん俺が想像している以上に面倒臭い奴だ。命がいくつあっても足りやしない。

「ぷはっ!」

 あ、と俺は腕の中に閉じ込めていた炎鬼の存在を思い出した。少年を見下ろせば、予想通り、顔がこれでもかっていうくらい歪んでいた。まるで、泣き出す寸前の子供のようだ。

「っ、なにしてんだよ!は、やく、早く手当てしなきゃ!」

 俺から体を離した白崎の手には、真っ赤な血がべったりと付着していた。それを眼にしてしまったせいか、一瞬、ぐらりと体が揺れる。

 倒れる前に葛城が支えてくれたが、ずっと堪えていた鈍い痛みに呻き声が洩れた。

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