誰か夢だと言ってくれ
「うそだろ……」
声がした方に顔を向ければ、阿修羅御一行様の登場。
まじで聞いてないんですけど。どこでシナリオが狂ったの?麻紀さん助けて。
「あいかわらず、説教臭ぇ奴だな」
野性的な笑みを浮かべる西園寺に、俺はがくりと肩を落とした。あ、やっぱり俺って説教臭いのか。
わかっていたけど、面と向かって言われると地味にショックだ。
「なーんで、お前らがいるんだよぉ……」
「てめぇが現れたって情報を掴んでな。捜し回ったんだぜ?」
捜されても困るんですけど。今日は働きすぎたから、西園寺の相手をしている気力も体力もない。早く家に帰ってベッドにダイブしたいくらいなのに。
うんざりとした眼差しを西園寺に向けると、その背後から飛び出してきた小柄な影があった。
あまりの速さに対処できずにいると、それは俺の腰にぎゅっと抱きついてくる。
「捕まえた!!」
「捕まえたって、お前……炎鬼?」
真っ赤な髪の少年は、俺をきらきらとした瞳で見上げた。
「ずっとあんたに会いたかったんだ。あんたと、もっと話がしたくて!」
なんですか、この可愛い小動物は。
お持ち帰りして、ぎゅっと抱いたまま眠りたい。いや、もうほんと、西園寺の登場で心が荒んだけど、まさかの癒しがここにいました。
「あー……まじ癒される」
覆い被さるようにぎゅっとすれば、腕の中で白崎の体が硬直するのがわかった。そして、わたわたと慌て始める。ああ、それすらも小動物じみて可愛い。
「なっ、な、にすんだよ!」
「お前んとこの総長さんのせいで、心身ともにぼろぼろなの。責任とって、俺の癒しになってくれ」
不意に、腕の中の白崎が、なにかに気付いたようにびくっとした。もがもがと暴れようとするそれを、俺は西園寺らにわからないように拘束する。
これは気付かれちゃったなぁ。
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