それは、こちらの耳にも届いていた。唯依の勝手な行動により急遽他の三人を集めた綾凪が、口を開こうとしたまさにその時。銃声に驚いた鳥達が一斉に空へと羽ばたいていく。一度鳴っただけ、その後は恐ろしいほど静かだった。

「今の……ヨリ、だよな……」
「まずいやろ、この状況。相手しとるんが一角ならまだしも対角やったら……あの子、間違いなく潰されるで」

現状から考えて相手は対角だと考えるのが妥当だろう。今の銃声も、対角を前にし激情した唯依が発砲したと考えてまず間違いない。

「どうすんねや、アヤナギ」

キセキが綾凪を正式名で呼ぶ時は決まって『何かある時』だ。珍しく真剣な顔付きのキセキを目にし、綾凪は深い溜息をつく。常にその顔でいろと言ってやりたい衝動を抑え、言葉を続ける。あの問題児を連れ帰ることが第一の目的であること。対角と対峙することになったとしても唯依の命を優先させ逃げ帰ること。勝手な行動は取らず、必ず指揮官の指示に従うこと。

「必ず、生きて帰る。あいつも、生きて連れ戻す。以上だ」

止まない雨はない、晴れない霧はない。そう、簡単に散らせられる命も、ないのだ。

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