静けさの漂う荒野に、銃声が木霊する。漆黒のコートを纏った幼い男女が、命の削り合いをしていた。

「っくそ……!」

容赦なく襲う銃弾を避けながら、少年はその瞳に苦渋の色を浮かべた。それでも尚やむことなく響き続ける銃声は、少年から余裕を奪っていく。苔だらけの岩陰に身を潜め、はっと息を吐いた。少しの油断が命取りとなる状況下、一度として気は抜けない。

相手は自分と同い年の、それも女。平均より随分と小柄な彼女との身長差はおよそ三十。銃と刀というハンディを差し引いたとしても、女相手に負けなどあり得ないというのに。

「はあ……はあ…………っ……かっこ悪……」

息を整えながら汗を拭うと、腕にべったりとした感触が残る。これだけ暴れても涼しい顔をしていた少女に対し、自分はこの様だ。こうして身を隠して出ていけない自分が不甲斐なく泣けてきそうだ。

息を殺し周りに注意を払っていると、近くで砂利を踏む音がした。柄を握り直し、唾を飲み込む。流れ出す汗を目にし、思いの外緊張している自分に気付く。自嘲気味に薄く笑った後、姿勢を低くして飛び出す準備をする。一息、それすらも惜しい時間だ。卑怯な手だとは分かっているが、これを逃せば次はない。

音が、止まった。

「獲った! ……っ!?」

勢い良く飛び出した少年の額を、銃口が捕らえていた。冷や汗が、頬を伝う。

「油断しすぎ。これが実践だったら間違いなく死んでるぞ」
「うっへー……お前強すぎんぞ……」
「当然。スーパールーキーなめんなよ」

銃を下ろした少女を前に、少年は幼子のように頬を膨らませた。誇らしげに胸を張り、少年の握っていた刀を取る。まじまじとその刀身を見つめ、感心したように何度も頷く。

「はあ、いつ見てもすげぇ刀だなぁ」
「これ、かかってますから」

親指と人差し指で丸い形を作り、揺らして『金』を示す。それやめろ、と少女に手を叩かれ、大袈裟に痛がる。そんな少年に苛立ち、眉間に銃口を突き付けた。

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