小ネタ | ナノ


  童話パロ


短編連作ネタのつもりだったのにどんどん長くなったTwitterで呟いてたやつ
1つ1つが中編レベルになってるし、小ネタのくせに10000文字越えしてるので、とても長い


童話パロみたいな、1話ごとに主人公の変わるオムニバスみたいなのを書きたい。
魔女が振りまいた呪いをうけた女の子たちと、それにまつわる愛の話みたいな。


はじまり
愛なんてまやかしだ、と人を信じることのできない魔女がいました。そんな彼女を愛した海賊がいました。
海賊がどんなに言葉を行動を尽くしても、魔女は海賊を信じようとはしません。しかし、少しだけ心が動いたのか、魔女は愛について確かめることにしたのです。真実の愛でしか解けない呪いを振りまくことで。

そんな感じの魔女に呪われるという、とばっちりを食らった女の子たちの話


ミホークさんと眠り姫
何者も寄せ付けない荊の城の噂に、ミホークさん面白そうだ、と挑んで行った。確かに並の剣士では突破できないけど、鷹の目の実力では容易く突破できるんだよね。
「…なんだ、つまらん」とか言いながら城内を探索していたら、一際豪奢な部屋の寝台に女の子が横たわっていた

近づいてみれば眠っているらしい。揺すっても起きない、彼女は何をしても目を覚まさなかった。
で、まあそんな彼女に一目惚れ? をしてしまう。近くの街で色々調べたら、荊の城には昔お姫様がいた、なんて噂を聞いたりするかもね。ある日、覚めない眠りについたのだ、と。

そこからミホークさんは彼女のところに通うよ。しかも甲斐甲斐しく世話焼くよ。寝てるけど。周りの掃除したり、髪の毛とかしてあげたりね。流石に服を脱がせるのはやらなかったけどね。「今日はいい天気だ。外の荊に花が咲いたぞ」とか話しかけたりしてる。

ただ眠る美しい人の、その瞳の色が知りたい。声を聞きたい。なんて思っている。
で、彼女のところに通いつめたある日「……すまない」と詫びを入れてから、キスをしたんだ。どうしても愛しくて堪らなかったから。
そしたら、彼女がほんの少し身震いをして、ゆっくりとその目を開いてくれた。

しばらく互いに見つめ合って時が止まったような瞬間がすぎた。ようやく口を開いた彼女は「…あなたは、そのような姿をされていたのですね」なんて嬉しそうに言う。
眠っているように見えて、時々、意識があったらしい。だからミホークさんが語りかけてくる声はずっと聞こえていた。

「ずっと、お前の瞳を知りたかった。…うつくしい、な」なんてミホークさんは言うんだ。彼女の瞳は淡い金色だといいね、お揃いだね。
眠る彼女を愛して、姿の見えない人を愛して、互いに知らないことは多くてもそれは真実の愛というやつだったから、魔女の呪いが解けた。

それから、ミホークさんは彼女を連れて行くからね。色々なものを見せてあげる。お互いのことをたくさん教えあって、幸せに暮らすんだ。


エースくんとラプンツェル
エースくん(まだスペード時代)が辿り着いた島の森の奥、高い塔が建っていた。冒険大好きなエースくんは迷わず周囲を調べるよ。でも入口がない。なんで? って思ってたらてっぺんの窓から歌が聞こえた。
「なあ! 誰かそこにいんのか!」って声をかけたら女の子の悲鳴が。

森の奥まで人が来るのは珍しいから驚いたらしいよ。でもすぐに窓から顔をのぞかせてくれた。「そこ、どうやって登ったらいいんだ?」ってエースくんが聞いたら金色のロープみたいなものが落ちて来た。使えってことかなって、それを使って上まで登ったら髪の毛だったからびっくりした。

塔の上のお嬢さんは魔女に呪われたせいで妙な髪を持っているらしい。その上、塔から出ることが出来ないんだって。何度か出てみようと頑張ってみたことあるんだけど、無理だった。なので彼女は生まれてこの方、塔の上以外を見たことがないよ。

そんなお嬢さんが気になってしょうがないので、エースくんは毎日会いに行くよ。「おーい! 今日も来たぞー!」って。
「ずっと一人ぼっちで寂しかったけど、エースが来てくれてから本当に楽しい」村の人たちはこの辺りまで来ないし、来たとしても登って来られないだろうからって。

でも、エースくんがお嬢さんのとこに通えるのってログが溜まるまでの間だけなんだよ。で、出航の日、エースくんはやっぱりお嬢さんのところに行く。でも、今日は髪の毛下ろしてくれなかった。
「…なんで?」ってエースくん疑問に思ったけど、とりあえず塔を登った。野生児にかかれば楽勝

「なんで今日は髪の毛下ろしてくれなかったんだよ」ってエースくんが窓から入ってきてお嬢さんとてもびっくりしたよ。まさか、簡単に登ってくるとは思わなかった。
「…だって、顔を合わせたらお別れが辛くなるから」って言う彼女にエースくんは笑って手を差し出した。

「おれがここから連れ出してやるよ!一緒に行こう!」って。
無理よ、やってみなきゃ分んねぇだろ!みたいな言い合いの末、じゃあ攫ってやる!ってエースくんお嬢さんを抱き上げちゃった。
彼女の長い髪をロープがわりにフックに掛けて、制止も聞かずに勢いよく窓から外へ。

いつもそこで見えない何かに弾かれてたのに、どうしてか外に出られてお嬢さんびっくり。壁を蹴って勢いを殺しながら、地面まで行くよ。
「あ、解き方考えてなかった」お嬢さんの髪の端、塔の上に繋がったままになっちゃって、エースくんが悪りぃってちょっと慌ててる。

もう一回登って解いてくるよ、って言うのにお嬢さんは首を横に振った「切って。お願い」って。
エースくんはそれを聞き入れて、ナイフで彼女の髪をバッサリ切った。まるで呪いを断ち切るように。
それから彼女を連れて海に出るんだよ。呪いが解けたのか、彼女の髪は足元まで伸びて止まった。

人より長いし、伸びるスピードも早いけど、それだけ。呪いの後遺症のようなものかもしれない。
ただ、美しい髪なので狙われたりするかもね。エースくんが全力で守るよ。


シャンクスとおやゆび姫
親指姫は呪いのせいで小さな体になってしまったお姉さん。ある日突然小さくなったから大変だった。でも割と逞しいので順応して人の家とか船とかで借りぐらししてた。
なんだか珍しい見た目になってるので、見つかるとろくなことにならない。だいたい捕まる。

でも逞しい人なので自力で脱出したりするよ。小さいって逃げるのにも隠れるのに便利。
で、そんなおやゆびちゃんが渡り鳥の背中に乗って旅をしてる途中でシャンクスに出会うんだ。渡り鳥が偶然船のマストにとまったの。その時に落っこちて、それがちょうどシャンクスの頭の上だった。

「いたい!」って頭の上からなんだか可愛らしい声が聞こえてシャンクスびっくり。そーっと捕まえて手のひらに乗せてみたら小さい女の子だったよ。
「…なんだお前?」「なにって、人間です?」みたいなよく分からない会話のあとで自己紹介したよ。シャンクスから。

なんだかんだで船に居着いたおやゆびちゃんだよ。バスケットに布詰めてベッド作ってあげたらめちゃくちゃ喜んだ。「ふかふか! すごいわ! うれしい!」って。かわいいね。
「シャンクスは海賊なのにやさしいのね」「そうでもねぇよ。お前だけ、特別」とかしれっと口説いたりしてた。

だって可愛い。小さいけど。あと、めっちゃ逞しいところとか気に入ったみたいだよ。
そんな感じでおやゆびちゃんはシャンクスの肩の上とか頭の上とか、ポケットの中とかに入れてもらいながら元気に暮らしてた。
で、ある日なんかの拍子におやゆびちゃんが船から落ちた。シャンクスの目の前で。

手を伸ばしても届かなくて、小さな彼女が海に落ちるのがスローモーションみたいに見えて。「シャンクス!」って名前を呼ぶ声が遠くにきこえた。
シャンクスはみんなが止めるのも聞かずに後を追って海に飛び込んだよ。でも、おやゆびちゃんはとても小さいので見失ったらもう見つからない。

必死に探してたら、沈んでいく女の子を見つけて、大きさは違うけどそれは紛れもなくおやゆびちゃんだった。
引き上げて、船の上まで戻って、それからようやく彼女は目を開けた。
「大っきくなってる? なんで?」って戸惑うのに構わずにシャンクスは思いっきりおやゆびちゃんを抱きしめたよ。

「無事でよかった…」だってさ。なんで大きくなってるのかとか、そんなことより無事だったことが嬉しい。おやゆびちゃんも「ごめんね、シャンクス。ありがとう」って抱きしめ返したりした。
シャンクスの想い呪いを解いたんだよ。その後、おやゆびちゃんはシャンクスと暮らすのさ。


サンジくんと白雪姫
サンジくんがどっかの島で出会ったのは黒檀の髪に白雪の肌、鮮やかな赤い唇の女の子。なにかから逃げているらしい彼女に思わず手(足?)を貸した。
「レディになにしてやがる!」って追っ手を軒並み蹴り飛ばした。

ぽかん、としてる白雪ちゃんに大丈夫? って心配そうに呼びかける姿は完全に王子様だよね。
白雪ちゃんは戸惑いながらも助かりましたってお礼を言うよ。でも他人を巻き込むつもりはないからそのままどこかへ行こうとするよ。
もちろんサンジくんは止めた

「待って、キミがどうして追われているのか分からないけど、力になれると思うんだ」って。
「…お気持ちだけで十分です。本当にありがとう」とかなんとかやってるうちにまた追手。結局、サンジくんに手を引かれて船まで逃げることになってしまった。

で、なんだかんだで海に出ちゃったり。白雪ちゃんが本当に申し訳ありません、って頭下げてる。いいって、ってみんなは言ってくれたかもね。
「それで、どうして追われてたんだい?」「……私が、こんな見た目だから」
白雪ちゃんは日に日に美しくなる『呪い』をかけられている。

そのせいで、悪い人にも好かれちゃってるんだ。それで追われてた。
だから白雪ちゃん「綺麗」とか「美しい」って言われるの嫌いだよ。サンジくんはその辺を敏感に感じ取って言わないでいてくれる。本当はすごく言いたいけど。
なんだかんだ麦わらの一味としばらく一緒に航海してるといい。

本当はすぐに降りようと思ってたのにタイミングが合わなかったりしたのかも。
そんな中で、美女にメロりんしちゃうサンジくんが自分相手だと徹底的に紳士のように、王子モードで振舞ってくれてることに気づくよ。白雪ちゃん自分が美人な自覚はあるから、どうして? って聞いた
「レディの嫌がることはしない主義なんだ」

綺麗だって言われるの嫌いなんだろう? って優しい顔をしてくれたサンジくんに白雪ちゃんはなんだか胸がいっぱいになっちゃった。「ありがとう、サンジさん。あなたみたいな人、はじめて」って微笑む白雪ちゃんはとてもとても美しかった。

白雪ちゃんを狙ってる悪い人の中には頭のおかしい、白雪ちゃんを観賞用のお人形にしたいなんて思ってるやつもいたりする。そいつが『眠り姫』の話を聞いたらしく、魔女を見つけて同じ呪いを白雪ちゃんにかけるように頼んじゃった。愛を試したい魔女はその依頼に、毒のリンゴを作って渡した。

で、いろいろあって眠りの呪いをこめたリンゴを口にした白雪ちゃんはぱったり倒れて目を覚まさなくなっちゃった。そのまま攫われそうなところをサンジくんが頑張って守った。
でも、白雪ちゃんは目を覚ましてくれない。チョッパー曰く「眠ってるだけだ。でも、原因が分からないからなにもできない」

このまま眠り続けたら衰弱して死んじまうかも、なんて言われてサンジくんは顔が真っ青だよ。「…結局、守ってあげられなかった」おれのせいだ、って自分を責めちゃう。ごめん、って泣いた。そしたら急に華奢な身体が震えて、白雪ちゃんが大きく咳き込んだ

真っ赤な唇から毒々しいほど赤いリンゴの欠片が吐き出されて、白雪ちゃんはしばらく咳き込んでた。サンジくんは戸惑いながらも背中をさすってあげてたよ。
「…あれ、どうしてベッドの上?」って困惑してる白雪ちゃんをサンジくんは全力で抱きしめた。

「キミを失うかと思った。…すごく怖かった」ってまだちょっと泣いてるサンジくんを白雪ちゃんは愛おしく思いながら抱きしめ返したよ。とりあえず落ち着いてから想いを確かめ合ったりした。
白雪ちゃんの呪いは解けてるけど、相変わらず美しいままだよ。

何もしなくても容姿に磨きがかかることがなくなっただけ。日焼けとかするようになった。にきびができた、って感動してるかもね。
今後は努力して美しさを保つよ。そのうち楽しくなってきてるけど。
サンジくんは頑張る姿も素敵だなぁ、とか思ってる。別に容姿が衰えても好き。中身ごと惚れてる。


マルコとかぐや姫
かぐや姫は魔女に『繁栄の呪い』をかけられてる。そこにいるだけで家や土地に繁栄をもたらす力がある。まあ、座敷童みたいなもの。性質としては白雪ちゃんに似た呪い。
魔女曰く、美しいもの、力のあるもの、優れたものに向けられるのは真実の愛ではなく、偽りの愛だろう。
利用しようとそばに置いているだけ、愛しているのはその力や美の方。本当の自分を愛してはもらえない、そして最後には破滅を招く。そういう呪い。
そんなわけで孤児のかぐやちゃんは養い親のところで半ば軟禁状態で育ったよ。かぐやちゃんは欲に溺れて割とやらかしてる養い親があまり好きではないよ。

そんなかぐやちゃんのお屋敷に、ふと現れたのが不死鳥だったんだよ。偵察の一環だったのかな。塀の上の翼を持った男に「どなた?」ってかぐやちゃんが声をかけたんだ。
「ちょっとお邪魔してるよい。騒がねぇでいてくれると助かる」「…どうしようかしら」なんてそんな出会い。

「ねぇ、鳥さん。わたし退屈してるの。面白い話でも聞かせてくれる?」なんてかぐやちゃんが言うから、お安い御用だ、ってマルコさんは旅の話聞かせてくれるよ。それから、夜だけ会って話をしていた。
お互いに名前は名乗ってない「鳥さん」「姫さん」って呼び合ってたりしたかも。

そんなことしてるうちに、かぐやちゃんに結婚の話が出てくるよ。地位の高い男と結ばれてさらなる繁栄をってやつ。
求婚してくるのも欲に目が眩んだ奴らなので、わがまま姫のふりをして無茶振りしまくった。「わたし、燃えない服がほしい」とか「1000年に一度しか咲かない花がほしい」とかね。

「…結婚なんてしたくない」「災難だねい。逃げ出しちまえよ」「それができたら苦労しないわ」かぐやちゃんは一人で生きて行けるほど強くないって分かってるから、逃げ出すことも出来ずにいる。このまま惰性で誰かと結婚して、自由もなく生きていくんだって、ため息ついてる

「そろそろ諦めて誰かに嫁がなきゃ」比較的まともな人で妥協するわ、なんてかぐやちゃん達観してる。
「姫さんも大変だねい。ま、いい相手が見つかるよう祈ってるよい」「人ごとだと思って」とかそんな会話に少しだけ救われてるかぐやちゃん。あなたが連れ出してくれたらいいのに、なんて言わない。

で、次の日にいつも通り求婚して来る男たちに無茶ぶりしまくってたら、マルコが来てた。かぐやちゃんはそれだけで何もかもを察した。
「わたし、不死鳥の羽が欲しいわ。とても綺麗だって聞いたの。持って来てくれた人と結婚する」わがまま姫らしく、戸惑う男たちにそう言って笑う。

その中で、マルコだけが悪い顔して笑って、その姿を不死鳥に変えた。「羽だけなんて言わずに丸ごとくれてやるよい」「それ、とっても素敵ね」って、そのままかぐやちゃん攫っちゃった。
ようやく自由を手に入れて、かぐやちゃんはあははは! ってマルコの背中で大笑いした。

それから、ようやくお互いに名前を教えあったりしたよ。で、本当に結婚する。マルコさん本気で求婚してたみたい。


幕間
振り撒いた呪いは次々と解けて、愛の存在を証明していく。魔女は、ふと愛を囁く海賊のことを思い出してため息をついた。


クザンさんと人魚姫
「わたしが大きくなったらクザンのお嫁さんにしてね」「あー…、もしお嬢ちゃんが陸にあがれるくらい大きくなっても同じこと言うなら考えるよ」
人魚ちゃんとクザンさんは昔々にそんな約束をした仲。攫われて捕まってた人魚ちゃんは一時期海軍に保護されてた。

尾びれに大きな怪我をして、治るまでの間の話。面倒を見てくれたクザンさんに懐いたんだよ。初恋だったね。
で、一途な人魚ちゃんは本当にクザンさんが好きなまま大人になった。でも、怪我が原因なのかいつまでたっても尾びれは二股にならない。

陸に上がれないと、クザンに会えない。お嫁さんになれないって落ち込んでる。そんなところに魔女が現れて「お前の声と引き換えに足をあげてもいいよ」って取引を持ちかけられた。
「お前が人魚だって伝えたら、魔法は解けてしまうけどね」人魚ちゃんのこと、クザンさんが覚えてたら問題はないんだよ。

人魚ちゃんから伝えたら魔法が解けちゃう制約付きってこと。でも人魚ちゃんは応じた。
魔女的には一途な想いが報われることがあるのか知りたかった。想いを伝える方法もないのに、それでも結ばれるのかを。
そんなこんなで足(本当に人間の足)をゲットした人魚ちゃんはクザンさんに会いに行くよ。

魔女がオマケでシャボンディまで送ってくれた。
でもいきなり人攫いに会うからね。不運だったけど、昔と同じようにクザンさんが助けてくれた。運命的だね。
で、保護したお嬢さんは声が出ないらしい。筆談はできるけど、細かい意思疎通が難しい。仕方がないので一時的にクザンさんが手元に置くよ。

でも、クザンさん助けた女の子があの時の人魚ちゃんって気づいてない。まあ、人間だと思ってるしね。
人魚ちゃんはクザンのそばに居られる! って喜んだけど、上手く意思疎通できないし、しかも自分のこと覚えてないみたいだし、でちょっと落ち込んだ。

それでもクザンさんが好きだから、ここから好きになってもらおう!って頑張ることにした。健気。
なんだかんだで家事とかして家で待っててくれてる人魚ちゃんだよ。新妻かな。かわいいね。
「なんか、嫁さん迎えた気分」「…!」なんて言ってるかも。人魚ちゃん嬉しそう。

でも、そのうちクザンさんが美人なおねーさんと一緒にいるの目撃しちゃって大変なショックを受けるよ。クザンの運命は私じゃなかったんだって落ち込んだ。
「元気ないけど、どうしたの?」なんかあった? って聞いてくれる優しさが辛くて、人魚ちゃん逃げ出すことにしたよ。

上手く言葉がまとまらなくて「ごめんなさい、さよなら」って、それだけ書いた手紙を置いて海に帰ることにした。
久しぶりに海に足を踏み入れたら、なんだか泣けた。あれ、でもこのまま海に入っても人魚じゃないから泳げないな。帰れない。

って、お腹まで海に浸かったあたりで思いついた。どうしようかな、戻ろうかなって思ったあたりで名前を呼ぶ声。
能力者なのに海に浸かるのも厭わないでクザンさんが駆け寄ってきた。そのまま人魚ちゃんを抱き上げて浜辺まで戻るよ。妙な手紙だったから、心配で探しに出てたんだ。

「何があったのか分かんないけど、早まらないで」お願いだから、ってびしょ濡れのクザンさんが言うから人魚ちゃんは首を横に振った。別に早まったわけじゃない。
『わたしね、ほんとうは人魚なの』とクザンさんの手に文字を書いて伝えた瞬間、魔法が解けて人間の足は人魚の尾びれに元どおり。

「嘘ついててごめんなさい。わたし、もう海にかえろうと思ったの」って声も取り戻した人魚ちゃんが言う。できれば少し深いところまで送ってほしいなって。
クザンさんはとてもびっくりしてたけど、人魚ちゃんを抱き上げたまま陸の方に歩き出すからね。

なんで!って今度は人魚ちゃんとてもびっくり。
「だって、会いに来てくれたってことはそういうことでしょ? 気づいてあげられなくてごめん」ってクザンさんがまた名前を呼んでくれた。尾びれの傷に見覚えがあったから、人魚ちゃんのことを思い出した。それから、会いに来てくれた理由も。

「まだおれを好きでいてくれるなら、お嫁さんにしてあげる」
「…でもクザン、綺麗なお姉さんと一緒にいた!」「あー、あれは仕事の付き合い」「わたしのこと覚えてなかった!!」「それはごめんって。でも人魚が人間になってるんだから気づかないでしょ、普通」

「それに、美人さんになってるから余計分かんなかった」なんて口説かれて、結局人魚ちゃんは小さい頃の夢を叶えたよ。しばらくはバスルーム生活とかだと愉快だね。
もしかしたら魔女がまた気まぐれで陸で生活しやすいように足をくれるかもしれないよ。でも人魚のままでもクザンさんは愛してくれます。


ドフラミンゴとシンデレラ
シンデレラちゃんはドレスローザの近くにある国で暮らしてる女の子です。継母とお姉さん二人にいじめられています。お父さんが生きていた頃は良かったんだけどね…。
ドレスローザがとても近いので国同士で交流があるよ。ドフィがたまに遊びに来てるよ。

シンデレラちゃんは毎日毎日、広いおうちの雑用を一人でこなしてた。
ここまで書くとシンデレラちゃん健気で不憫な女の子…、ってなるけど全然そんなことはない。家事が楽しすぎるタイプの子だったからなんかむしろ楽しい。お料理とか無駄に凝ってるし、家の中は塵ひとつなく磨き上げてる。

継母と姉にはいじめられてるけど「私がいなきゃ生活営めないような奴らがよく吠えるなぁ」って思ってるよ。強い。
そんなシンデレラちゃんとドフィが出会ったんだね。なんかこう、海賊同士の小競り合いに巻き込まれたシンデレラちゃんなんだけど、フライパンで撃退したみたいな。強い。

それ見たドフィが爆笑したっていうなんか変な出会いだね。時々あったりするようになるかもしれない。シンデレラちゃんとても肝が座ってる。
「ドフラミンゴ様って物好きね」「そういうお前もな」って。ドフィが海賊らしく悪い人なの分かってるけど、あんまり気にしてないシンデレラちゃんです

で、なんだかんだあってドレスローザで舞踏会でもあったんだよ。シンデレラちゃん家はいい家柄なのでお姉ちゃん達がノリノリ。なんか国王様が嫁探ししてるって変な噂もついて来てるし。シンデレラちゃんは『いや、嫁探しとかするタイプじゃないでしょあの男』って思ってる。

でももし本当だったら嫌だなって思ってる。気に入らないなって。それが恋です。
まあ、自分は舞踏会に参加できるほどのドレスも持ってないけど、って掃除しながらため息ついてる。
で、そんなところに魔女さん登場「変な娘。そんなにあの悪人が気に入っているのかい」って。

「ええ、そうね。多分そう。好きになってしまったんだわ」ってそんなシンデレラちゃんに魔女が気まぐれで魔法をかけてくれたよ。「お前のその恋心が報われるところを見せておくれ。愛の存在を見せて」だって。でも魔女は意地悪なので12時になると魔法解けちゃう。

普段の灰かぶりとは見違えるほどきらびやかになったシンデレラちゃんは、周りの視線を独り占めするし、ドフィとダンス踊ったりするよ。でも名乗らない「名乗らねぇか。面白い女だな」「だってその方があなた好みでしょう?」私を見つけてご覧なさいよ、とシンデレラちゃんは12時前に帰る

ガラスの靴も落とした。わざと。だってあれ、魔女が自分にしか履けないって言ってたから。シンデレラちゃん強かな女です。

で、ドフィが持ち主探してシンデレラちゃんに行き着く。っていうか初手でシンデレラちゃんの所に来る。
「私だって分かってたならそう言えば良かったじゃない!」

「女は着飾ると見分けがつかねぇからな!」とか憎まれ口叩き合って、シンデレラちゃんは差し出されたガラスの靴を履きました。
「離す気はねぇからな?」「海賊の癖に今更なに言ってるの」って感じでドフィはシンデレラちゃんを連れて帰ったんだよ。

惚れた女が自分の方から懐に飛び込んできたもんだからドフィはとてもご満悦です。
その後はお城広いから掃除が楽しすぎたり、ファミリー多いからお料理楽しい! ってなってたりする家事バカのシンデレラちゃんが見られたりする。


魔女と海賊
「賭けをしようか。愛でしか解けない呪いが解けたら、愛の存在を認めよう。そしたら、お前の言葉を信じてもいいよ」
それは長い長い時間を使う賭けだった。けれど、海賊はお前の気の済むまで待つさ、と魔女の提案を受け入れた。

呪いが次々と解けて、愛の存在を証明していく。その中で、魔女はようやく海賊の言葉を信じてもいいか、と考えを改めた。きっと、それは彼の心からの言葉で、真実なのだろう、と。
しかし、賭けをしよう、と海賊から離れて長い時間が経つ。今でも同じ想いを抱いているのかはわからない。

だから、魔女は海賊がまた愛を囁くのならそれを受け入れようと決めて、海賊の元へ向かった。白い鯨を模した海賊船へ。
突然現れた魔女に船の上では騒ぎになるけどオヤジの「おれの客だ。お前ら大人しくしてろ」の一言で収まった。

魔女がさて、なんと問えばいいだろう、と考えているうちに「そろそろおれの愛を信じる気になったか」って言われて、魔女さん大笑いした。
「お前、本当に馬鹿だね。こんな面倒な女がまだ好きなのかい」「だから、愛してるって何度も言ってるじゃねぇか」

「お前の勝ちだよニューゲート。愛っていうのは確かに存在するらしい」何十年も待っていてくれた男に、なんだかたまらない気持ちになる。それが愛だって魔女さんはちゃんと分かってた。

そもそも解ける条件が「真実の愛」っていう魔法をかけられるんだから、魔女さんは最初から愛の存在をどこかでちゃんと分かっていた。そうじゃなきゃそんな魔法はかけられないんだから。


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