瓶詰め妖精
ある日エースくんが釣りをしていたら瓶詰めの妖精を釣り上げましたっていうそういう話。
妖精さんは女の子、っぽい?妖精だからたぶん性別はない。
なんか入ってる? って覗き込んでみたら中に妖精さんがいたっていう。とりあえず蓋をとって出してやる。羽があるから自分で出てくるかと思ったけど、どうやら上手く飛べないらしい。
「妖精、か? 綺麗だな」
ってみんながエースくんの手のひらの上に乗った妖精さんに注目してる。でも妖精さん顔が真っ青。もしかして怖がらせたか、ってみんなが心配してたら妖精さんは突然口元を覆ってしまったよ。
「うっ…、ごめん…、ちょっとまって、きもちわるい」
エースが釣りあげる時に瓶を揺らしたから酔ったらしい。顔が青かったのは吐きそうだったからっていうね。
なんならそのまま吐くよ。小さいから大した量じゃないし、妖精さんだからかな、なんかキラキラしたものを吐いたよ。
まあ、吐いたことに変わりはないからファンタジーもくそもない。
で、落ち着かせてから事情をきいた。エースくんはちゃんと手を洗ったよ。なんかいい匂いがしたってさ。妖精ってすごいね。
「島の子供に捕まって瓶に入れられて、海に放り投げられた。しかも捕まったとこにぎゅってされたから羽が傷んだ。最近の子供は恐ろしい」とか言ってるよ。自力で出られないからどうしようかと思っただってさ。
出してもらったし、しかも吐いちゃったので申し訳なくてエースくんに恩返ししたいって言い出すかもしれない。
「別にいいよ。たまたまだし」「でも何かさせて欲しいよ。こう見えて不思議な力はないから大したことできないけど」
いや、不思議な力ないのかよっていうね。要するに飛べるだけの小さい種族。あとなんか知らないけどいい匂いがする。
とりあえずエースくんは棚の裏に落としたコインを拾ってもらったかもしれない。埃っぽいよ! お掃除した方がいいね、とか妖精さんは咳き込んでたよ。
なんだかんだでそんな妖精さんが居着いてしまえばいいのよ。隙間に落ちたものを拾ったり、細かいところのお掃除したり。そんなことしかできないけど。
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