それから、それから
見知らぬ簡素な部屋のベッドで目を覚ました時、そこにいたのはマルコだけ。能力での再生が追いついていないのか、あちこちに包帯を巻いて傷ついたマルコは、ひどく弱って疲れ切ったような顔をしていた。それだけで、何もかもが望まぬ結末を迎えたことを理解できた。
「…なんだか、心配かけたみたいね」
「ああ。…でも、生きててくれて、良かったよい」
身を起こしたらあちこちがひどく痛んだ。いままで生きてきた中で一番の大怪我かもしれない。
しばらくはこの痛みと付き合っていかないといけないんだろう。治療系の魔法にだって限界はある。
「無理すんなよい。まだ痛むだろ」
「大丈夫よ。だって、無理してでも起き上がらないと、あなたを抱きしめてあげられない」
今にも消えてしまいそうなほど弱りきった愛しい男を抱きしめてあげたい。ただそれだけ。ほら、と腕を広げれば、マルコは苦しいくらいに私を抱いた。
ソフィア、と泣きそうな声が名前を呼ぶ。胸が苦しい。ああ、そうだ。私たちはあまりにも多くを失った。
「…ソフィア、お前だけは、ずっと一緒にいてくれよい」
「ええ。いいわよ、そばにいてあげる」
お互いに死にそうなくらい傷だらけで、それなのに手に入れたものは何もない。だからこそ、私だって、この愛しい男だけは失くしたくない。
「最後まで、ずっと一緒にいましょうね」
「…ああ」
まるでプロポーズみたいに囁き合って、私たちは少しだけ泣いた。
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