君の誕生日
・たぶん、2章の真ん中らへん
・まだくっついてない頃
ーーーーー
「…これ、普段の宴となにが違うの?」
「なにも違わねぇよい。ただ酒飲む口実が欲しいだけだ」
唯一の違いといえば、主役であるマルコのそばにプレゼントの山ができているくらいだろうか。流石は一番隊の隊長。随分と慕われているらしい。
「まあ、これも、ほとんど酒なんだけどよ」
「お酒好きすぎない?」
「悪りぃかよ」
別に悪くはないけど、と笑えばマルコは軽く肩をすくめた。まあ、本人がいいならいいのだけれど。私も悩んだりせずにワインでも選べばよかっただろうか。
「それで、お前からはねぇのかよい」
「あるけど、お酒じゃないからね」
催促するように向けられた手のひらにリボンをかけた装飾的な小瓶を乗せれば、マルコはなんだよい、と首を傾げた。まあ、魔法使いじゃないと、一目で価値を判断できなくて当然だと思う。
散々悩んで棚の奥から引っ張り出した小瓶は、金を溶かしたような液体で満たされている。その量は、スプーン一杯になるかどうか。だけど、調合に時間のかかるとても貴重な薬は誕生日に贈るのに相応しいだろう。
「フェリックス・フェリシス。別名を幸運薬。飲めば企みの全てが成功するなんて言われてる。つまり、幸運をもたらしてくれる薬よ。私が自分で調合したものだから、怪しいものじゃないわ」
「…へぇ。魔女ってのは本当になんでも作れるんだねい」
「まあ、それ調合に半年かかるから、割に合わないんだけどね」
幸運薬作るくらいなら、自分で努力した方が早いし。幸運には限度がある。フェリックス・フェリシスは服用者の力を引き出す薬でしかないのだから。
「貰っちまっていいのかよい。そんな手間のかかるもん」
「だって貴方、誕生日じゃない。だから特別」
おめでとう、と祝いを口にすれば、マルコは嬉しそうに目を細めてありがとよい、と笑ってくれた。
prev /
next