1月1日 (流川楓)


幼馴染の楓の誕生日は年が明けたばかりの1月1日。覚えやすいし、たとえ忘れていたとしてもすぐに思い出せる日だからいいと思う。


日付けが変わるまで起きていられなかった子供の頃とは違って、夜更かしが出来るようになってからは何度も年が明けるとすぐに楓の家まで誕生日と新年のお祝いをしに行った。
だけど案の定というかなんというか、楓はいつもすっかり夢の中で。だから今回こそはと意気込んで夕方会った時に、後で行くからね! と念を押しておいた。

テレビのカウントダウンを見届けて、家族に今年もよろしく! と告げてから、じゃあ行ってくると家を飛び出した。「楓くん起きてるといいね」「本当に。今年こそはね」なんてやり取りも含めてもう毎年の我が家の風物詩で。

でもそういえば去年だって、部屋の電気がついてたわりにはちゃんと布団まで掛けて眠っていたからなぁ。
念を押したからといって、あの楓がちゃんと起きて待っててくれているとはあんまり思えない。だけど今年こそはとどこかで思っている私もいて。

今年はどうかななんて楽しみに思いながら徒歩数十秒の楓の家へと向かう。

「あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!」

流川家でも毎年恒例となっている私の年明け早々のお宅訪問はもう驚かれることもなく受け入れられているからなのか毎年快く迎え入れてくれる。

「楓は部屋?」
「そうだけど、起きてるかな」
「見てくるね」

苦笑いをする楓のお母さんにそう笑いかけると、通い慣れた楓の部屋に向かう。今年も電気はついているけどどうかなと扉を開ける。

結果はというと、今年も楓は眠っていて。

だけど去年みたいに布団ではなく、腕を組んで床に座ったまま眠っているということは、もしかしたら眠らないように頑張ってくれていたのだろうか。

「楓、来たよ。起きて」

楓の腕を揺らせば、少しずつ目が開いていく。そうして眩しそうに目を細めながらも楓は私を視線に捉えたらしく、じっと睨まれた。

「……来るのおせー」
「まだ年明けたばかりなんですけど」

睨み返すとふと時計に視線をやった楓が、それもそうだなと息を吐く。

「今年もまた寝てたね」
「これでも頑張った」
「布団じゃなかったもんね」
「おめーが来るって言うから待ってた」

ふっと表情が緩んだ楓は、そういえばまだおめでとうって聞いてないな? と顎に手を当て呟く。

「楓、おめでとう。誕生日も新年も」
「おー、おめーもな」

楓は口角を上げて笑うと、難しい顔をしながら首に手を当て回している。だけどそのまま私の隣に座り直すと、私の肩に頭を預けてきて。

「……もしかしてまた寝るの?」
「違う。首が痛いだけだ」

ゆっくりと首を振って否定をするのに、目を瞑るだなんて。

きっと他の人には見せないだろう油断しまくった幼馴染のそんな姿に優越感を感じたけれど、それと同時に早く私の気持ちにも気がついて欲しいものだと思ったりもして。
だけどまあ今日のところは楓の誕生日で新年というおめでたい日なのだから、この幸せに浸ることにしようか。なんてことを、気持ち良さそうに眠っている楓の寝顔を見て思った。



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