流川の嫉妬 (流川楓)


最近、流川に彼女が出来た。きっかけは告白されたから付き合ったっていうあっさりしたものだったらしいけど、これがどうやら流川としてはかなり彼女に心酔しているらしい。


最初は私たちには何も言わずに(まああの子が彼女が出来たからといって自分から報告するとも思えないけど)一緒に帰っていたみたいだけど、私たちに知られてからは全くと言っていいほど隠さなくなった。

今日だって練習後は自主練もそこそこに桜木花道やリョータたちに冷やかされるのもものともせず、こっそり練習を覗いていた彼女の所まで行って。すると近づいてきた流川に驚いて隣で黄色い歓声をあげている流川親衛隊には目もくれず、彼女を真っ直ぐみると「……帰るか」と一言。そんな流川に彼女は戸惑っているようだけど、流川本人はなんにも気付いていない。不思議そうに彼女を眺めているだけだ。

「でも……、」

するとそんな流川とは対照的に彼女の視線は流川から親衛隊へと動いて、でも親衛隊は目がハートのままで。もう一度流川を見上げた彼女のことを、流川はやっぱり不思議そうに眺めている。

「みんなはいいの?」

……あー、ほら流川!彼女、親衛隊のことが気になってる!ここでガツンと言っちゃいなさいよ、オレの彼女だって!!

そうやって、私が思ったのもつかの間。流川の視線は集まって喋っていたリョータたちを射抜く。ギラりとした流川の視線に、視界の端にしかいないだろう私までもが何故だか姿勢を正される。

「うん?……あぁ、いい」

そう呟くと流川は恨めしそうにこちらに視線を残しながら、彼女の手を引いて消えていった。
そしてそこまで見届けると体から力が抜けたから、その場にヘナヘナと座り込む。

……そもそもみんな、今はアンタたちのことを見てもいなかったっちゅーの!

初めて見た流川の彼女への独占欲に思わずつっこむ。これは相当彼女のことが好きだわね。そんなことを考えながら呆れたのか感心したのか、はぁーっと息を吐くとリョータたちがこちらに視線を向けた。

「……何してんの、アヤちゃん。大丈夫?」
「腹減ったのか?」
「お!ミッチーオレ腹減った!」
「……そうじゃなくて、流川たち見守ってたの。アイツも中々やるわね」

何のこと? と首を傾げるリョータたちを見て、二人の間に入るつもりなんてこれっぽっちもないでしょうにみんな警戒されちゃって大変ねと少し気の毒に思った。それから、何かあったら先輩として守ってやるかと、うちの主力の初恋だろうそれを応援してやることに決めた。



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